嫌いだあんな奴。
大嫌いだ。消えてしまえばいい。



犬飼への嫌悪の感情が増えていくその反面。
俺とあの子のメールのやり取りは、順調に続いていたりする。何日も、何回もメールをする度に、あの子について色々知ることが出来たし、他愛のない話で盛り上がることも多くなった。


まずはどうやらあの子は携帯電話に不慣れらしい。
だから未だにメールの返事は少し遅い。メールアドレスが初期設定のままなのはそのためだろう。今度絵文字や顔文字の使い方を教える際に、アドレスの変え方も教えてあげよう。同じ会社の携帯で良かった。

それと、どうやら俺と同じで帰宅部のようだ。体を動かすことは好きらしいのだが、どうも部活をする暇がないらしい。結構忙しい毎日を送っているそうだ。だが俺とのメールは毎日したいと言われた。俺とメールしている間はとても気が休まるらしい。そう言ってもらえると俺としては凄く嬉しい。


他にもこの教科が苦手だとか、何の授業が一番好きだとか、色々なことをメールした。


もっともっと彼女のことを知りたい。
そして同じように俺のことをもっともっと知って欲しい。俺はもう彼女が好きで好きで堪らない。クラスメイトの誰だか全く検討がつかないが、メールをする度に彼女への想いが募っていった。


『会いたい。』


だからこんなメールを送ってしまったのだと思う。
画面越しではなく、直接彼女と話をしたいと思うようになってきた。彼女から言ってくるまで気長に待つつもりだったのだが、もうこの気持ちを抑えることが出来ない。


『毎日会っているだろ?』

『そうじゃなくて!だって俺は君の名前すら分からないから、名前を呼ぶことさえ出来ないじゃないか!』

『本当に?まだ気付いてないのか?』

『焦らさないでよ。俺だって君に会いたい。』



携帯電話という機械越しではなく。生身の君に会いたい。



『分かった。明日また直接想いを伝える。』



俺の熱い想いが伝わったのか、彼女は快く承諾してくれた。

ああ、どうしよう。
期待と緊張で心臓が爆発しちゃいそうだ。

俺はベッドの上でゴロゴロと忙しなく体を動かす。このまま寝てしまえば、明日からの明るい未来の夢が見れなさそうだと笑いながら、俺は携帯電話を握り締めながら目を瞑ったのだった。





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