蜜空間 | ナノ

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「あの人って…、」
「神田皇紀?!」
「何で此処に…!」

有名人が此処に居る事に歓喜の声を上げる者と、だがこんな所に居るわけがないだろうと半信半疑になっている者が居る。
だがどちらも驚きが隠せないようで、俺の隣に居る神田さんを見て大きな声で騒いでいた。

「(…そりゃ、驚くよなぁ)」

俺も最初見たときは凄く驚いたよ。
いや。他の人達よりも見慣れているというのに、俺は未だにこの状況に驚いている。果たして俺はこの人と一緒に生活することに慣れる日は来るんだろうか。
しかし。
本当に神田さんはは何でこんな所に来たんだろう…。

チラリと横に居る神田さんを見れば、騒がれる事を想定していたのか、それとも騒がれる事に慣れているのか、無表情のまま突っ立っていた。


あーあ。
皆も神田さんの本性を知ってショックを受けるだろうなぁと他人事のように思っていると、招集が掛かった。と言っても、学校のように綺麗に列を作る必要はないようで。しかも、「基本的に自由行動です。外では球技やジョギングを。少し移動すれば室内でのトレーニングも出来るよう設備が整っています。あとこまめな水分補給をするようにしてください。それでは適度な運動を楽しんでください。」との、一分も掛からない簡単な説明で終わった。

どうやら。俺が想像していた過酷なマラソンなどはしないらしい。むしろ今の説明から察するに、運動するかしないかも個人の自由のようだ。


「(ど、どうしよう…)」

しかし自由行動でいいなんて言われても、どうすればいいのか分からない。一人でボケッとしているだけでいいのかな?
さながら今の俺は、学校の先生から「二人組作ってー」と言われて、二人組を作れず一人だけ余った状況だ。助けを求めるように神田さんの方を見れば、一瞬の内に多数の男の人達に囲まれていた。


「あ、あの!神田皇紀さんですよね?!」
「握手…いいですか?」
「一緒に運動しませんか?」

と、俺とは違って大勢の人から声を掛けられていた。


「………」

す、すごい。
流石大スター。男の人からの人気も絶大だ。

だが、俺は心配だ。
あ、いや。神田さんではなく。
神田さんに群がっている人達が。


「(初対面の俺に向かって遠慮なく暴言を吐いてきた人だからな。あんまり騒ぎ立てると、叩かれちゃうんじゃないかな…)」

俺なんかちょっとした事でいつも叩かれてるし。暴力沙汰にならなければいいけれど、と。神田さんの本性を知っている俺は他人事とは思えずに、少し離れた所で慌てふためいていた。




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