▼ 番外編
<内容>
・タカニコが色々としていた時の、裏の様子です。
以上の内容が大丈夫だという方は、どうぞよろしければスクロールお願いします。
…一体俺はどうすればいいのだろうか?
それよりも何故こんな状況に陥っているのだろうか?
“あの”高瀬葵がこの便所に入ってきたということが分かってすぐに出なかったのがいけなかったのか、それとも個室トイレに入ったときから、俺の悪夢が始まっていたのか…。
恐らくこの便所に足を踏み入れた瞬間から、間違っていたのだろう。
「ぁ、…ン、高瀬…っ」
「……本当に堪らねぇよ、仁湖…」
それは俺の台詞だ。
何故俺が男同士の濡れ場の内容なんて聞かなくてはいけないのだ?
…というか、こいつらやはり付き合ってたんだな。
確かにクラスでも高瀬葵と中村仁湖は男同士だというのに、密着感が凄い。
まるで「二人の世界」だという甘い空気を醸し出しているしな。
まさか“こんなこと”をする間柄だったなんて。
色々な意味でやっぱり高瀬葵は怖ぇ。
…中村も可哀想なやつだな。
嫌なら殴ってでも、逃げればよかったのに…。
まぁ、殴って逃げたとしても捕まってたかもしれねぇが。
「あぁ…ぁあ、ン、ひぁあ゛…っ」
あぁ、クソっ。
女のようなエロい声出しやがって。
こっちは“そういうこと”がご無沙汰だというのに、そんな声聞かされたら変な気分になってくる。
男同士というのは受け入れ難い事実だが、…確かにこの声だけだったら抜けるかもしれない。
…しかし、今のこの状況で不覚にも勃ち上がってしまったペニスを処理することなど出来ずに、俺はただ二人に気付かれないように息を潜め続けた。
「イく…、あぁ、ン、せいえき…、が止まらないぃ…、」
自分の欲を抑え込んでいる内に、終わりが近づいてきたようだ。
俺はほんの少しの隙間から、二人の様子を伺う。
べ、別に興味があって覗いたわけではなく、ただ単に外に出れるかどうか伺っているだけだ…。
…どうやら中村は射精した後、気を失ったらしい。
これで俺はこの狭い所から出れる、と心の中で安心していたのだが、
…どうやらまだ終わりそうにないらしい。
なんと高瀬葵は、気を失っている中村に向かって小便を掛けている。
俺は目の前の光景を見て、口の中に溜まった唾をゴクリと飲み込んだ。
確かに中村の小便を飲んだ所からおかしかったが、普通気を失っている人間に小便を掛けるか?
…こいつ変態というか、狂っているというか…。
扉の隙間から見える光景は相当おかしいものだと思うが、それよりもおかしいのは俺の下半身だ。
痛いほど勃ち上がった己のペニス…。
普通男同士の、しかもこんなマニアックなものを見せられたら萎えるどころか、吐くくらいものじゃないだろうか。
……あぁ、クソっ。
本当に堪ったもんじゃない。
俺は我慢することが出来ずに、目を閉じる。
…そして先程の、女のような耳障りではない掠れた甘い中村の喘ぎ声を思い出しながら、ボクサーパンツから痛いほど張り詰めている己のペニスを取り出した。
「………は、…っ」
息が漏れる。
しかしそんなことすら抑えるのが億劫だった。
俺は飢えた獣のように欲をぶちまけたくて、ペニスを扱こうと握り締めた。
…それと同時に、
ドゴッッ!!
とんでもない破壊音が響き渡った…。
…な、何だ?
俺は閉じていた目を急いで開ける。
すると目の前の扉が少し外れかかっていた…。
「…俺の仁湖で抜いたら、
……殺す。」
そして低い高瀬葵の声。
まるで声だけで人を殺せるのではないかと思うくらい、恐ろしい声色。
高瀬葵はそれだけ言うと、色々なもので汚れた中村の身体を優しく抱き上げると、便所から出て行った。
「………は…、」
いつの間にか芽生えかけていた“芽”が、刈り取られた瞬間だった。しかし早々に刈り取られた方が楽だったのかもしれない。…どうせ“あんな奴”には敵わないのだから。
俺は誰も居なくなった便所の窓を開けて換気をして、乱雑にホースで床の汚れを流した。
高瀬葵がいつから俺の存在に気付いていたのかは分からない。事に至る前なのか、俺が喉を鳴らした時なのか、それとも息を漏らしてしまった時なのか…。
「…あぁ、クソったれ…、」
この床の汚れと一緒に、芽生えかけた感情も綺麗に流れれば楽なのに…。
しかしそんなことが簡単に出来ずに、
…ただひたすら俺を苦しめ続けるのだった。
END
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