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●藍崎side
「慣れろよ。」
「……え?」
そうだ。俺の匂いに慣れちまえばいいだけの話じゃねぇか。俺の匂いを嗅いだだけで勃起してしまうというのは可愛い事だが、このまま抱き締める事も制限されてしまうのは頂けねぇ。
「あ、藍崎?」
「…この距離はどうだ?」
「え、…いや、その…」
俺はそう言って緑間との距離を詰める。
今はまだ手を伸ばしても届かない距離。急な展開に焦っているようだが、まだ大丈夫そうだ。
俺はそのままどんどんと緑間との距離を詰めていく。
「…どうだ?」
「わ、わかんない、」
「分からねぇわけねぇだろ。」
「…で、でも、」
今の距離は、手を伸ばせば簡単に緑間に触れられる距離。だが俺は緑間に触れる事はしない。焦っては駄目だ。ゆっくり俺に慣れていけばいい。
「もう無理そうか?」
「よ、よく分からないけど…、」
「…どうした?」
「ど、…ドキドキ、する…」
「…………」
……っ、可愛いな、クソ。
手を出さないと決めたばかりだというのに、思わず手を伸ばして抱き締めてしまいそうになった。
緑間が好きだ。好きだから抱き締めたい。好きだからキスしたい。好きだから、もっともっと愛してやりたい。
だからこのままではいけない。
「…この距離なら、まだ大丈夫だろ?」
「…う、うん。多分…」
「もっと近寄るぞ?」
「…うん…、」
更に距離を詰めれば、緑間が喉を鳴らした音が聞こえてきた。こうも緊張されると、こっちまでその緊張が移ってくる。
今の俺たちはまるで必死に恋をする幼稚園児みたいだと思い、笑えてきた。いい年しているのに、こうも互いを必要としている。
前の俺ならこんな事思いもしなかっただろう。だが俺はもう知ってしまったのだ。
緑間が、本気で好きなんだ。
「……どうだ?」
「……っ、」
どんどんと距離を詰めていった結果、今では喋れば互いの吐息を感じる程今の俺たちは近づいている。
「……だ、ダメ…っ」
「何が駄目?」
「も、やだ、わかんない…っ」
「…おい、緑間…、」
「……ふ、…っ」
緑間の白い頬は、今では林檎のように真っ赤に染まっている。それに緑間の張り裂けそうな程高鳴っている心臓の音まで聞こえてくる。
緑間曰く、本当に「駄目」なのだろう。
今にも泣きそうなほど潤んでいる緑間の瞳。
俺はもう理性を抑えきれず、緑間の身体が壊れてしまいそうなほど、力強く抱き締めた。
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