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「何で、真田まで赤くなるんだよ…っ」
真田のこんな表情を見るの初めてかもしれない。こいつでも照れたりするのか。真田の貴重な表情を見れて嬉しいと思ってしまうあたり、俺は重症だろう。きっと心底この暴君に惚れてしまっているかもしれない。…本人には絶対に言わないけれど。
未だに顔が赤いままの真田の顔をジッと見ていると、顔を逸らされた。
「…こっち見んな」
そっぽを向き、真田は俺の顔を大きな手の平で覆ってくる。
「見ないと、手当て出来ないだろ」
「…もう手当てなんていらねぇ」
「まだ血が止まってないくせに。ほら、ガーゼ取り替えるから手を出して」
「………」
しかし一向に真田は手を出してくれない。それどころか未だに俺の方を見ようともしてくれない。
「おい、真田」
「……」
「手当てするから」
「………」
「真田、」
「……」
「…大輝」
「…?!」
ボソッと小さな声で真田の下の名前を呟けば、真田は大袈裟なほど肩を震わせた後、バッと勢い良く俺の方を見てきた。
「やっと、こっちを見てくれた」
「……っ、」
「ほら、手」
「……クソ、」
もう一度手を出せと言えば、真田は心底悔しそうに怪我した方の手を差し出してくれた。「結局、…先に惚れた方が負けか」という真田の低く掠れた小さな声に、思わず煩いほど胸が高鳴ったのは、…内緒だ。
END
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