短編集 | ナノ

 2





「何で、真田まで赤くなるんだよ…っ」

真田のこんな表情を見るの初めてかもしれない。こいつでも照れたりするのか。真田の貴重な表情を見れて嬉しいと思ってしまうあたり、俺は重症だろう。きっと心底この暴君に惚れてしまっているかもしれない。…本人には絶対に言わないけれど。

未だに顔が赤いままの真田の顔をジッと見ていると、顔を逸らされた。


「…こっち見んな」

そっぽを向き、真田は俺の顔を大きな手の平で覆ってくる。


「見ないと、手当て出来ないだろ」

「…もう手当てなんていらねぇ」

「まだ血が止まってないくせに。ほら、ガーゼ取り替えるから手を出して」

「………」


しかし一向に真田は手を出してくれない。それどころか未だに俺の方を見ようともしてくれない。


「おい、真田」

「……」

「手当てするから」

「………」

「真田、」

「……」

「…大輝」

「…?!」


ボソッと小さな声で真田の下の名前を呟けば、真田は大袈裟なほど肩を震わせた後、バッと勢い良く俺の方を見てきた。


「やっと、こっちを見てくれた」

「……っ、」

「ほら、手」

「……クソ、」


もう一度手を出せと言えば、真田は心底悔しそうに怪我した方の手を差し出してくれた。「結局、…先に惚れた方が負けか」という真田の低く掠れた小さな声に、思わず煩いほど胸が高鳴ったのは、…内緒だ。



END



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