短編集 | ナノ

 1(宝来視点)























「…ひぐ…っ」


殴れば今にも大粒の涙が零れそうなほど、目元には涙が溜まっている。
だけどそんなことを俺には悟られないようにと、潤んだ瞳で俺を睨み付けて来る。


そんな目で睨んでも、俺を煽る結果しかならないというのに…。
本当に可愛くて、苛めたくて、


仕様がない。









俺と柊はそれぞれチームの頭。
敵対している俺たちは、遇えばすぐに乱闘騒ぎになるくらいだ。





そして昨日、



柊は卑怯な手を使って、俺の側近に闇討ちしたのだ。


そこでキレた俺のチームの奴らは今日、柊と柊の側近を俺の前に連れてきた。






「くそっ、離しやがれ……っ!」



柊は背中の後ろで腕をロープで縛られ、四つん這いの状態で俺を睨み付けて来る。
その後ろには、柊の側近が同じように背中の後ろで腕を縛られている。



「宝来、てめぇ…っ、絶対ぶっ殺してやる!」


四つん這いでキャンキャン吠えている柊の姿は、まるで躾のなっていない犬のようだ。


俺の手下に殴られて少し腫れている頬が痛々しい。
…俺は手下に、こいつに触っていいとは言っていないというのに。


柊も簡単に、俺以外の奴に触られてるんじゃねぇよ。





「おい、聞いているのかよ…っ。くそ、死ね。離せ!」



「…解放は出来ねぇ。」


睨み付けて来る柊の顎をクイッと上にあげて、俺と視線を合わせる。
そうすると柊は、俺の顔に向けて血が混じった唾を吐きかけてきた。



「は、…ざまぁみろ。」


俺の顔に唾を吐きかけることが出来て嬉しいのか、柊は鼻で笑う。
しかし俺がその唾を指で拭い、わざとらしく舌を出して舐め取れば、柊は目を見開いて驚く。

そんな柊の一喜一憂に、俺は余計に興奮する。





「…おい、…柊。」



「…んだよ…?」



「解放して欲しいか?」


俺がそう言えば、柊は子供のように嬉しそうに笑みを浮かべる。
だがそれを俺に悟られまいと、すぐに怒りの表情に戻す。



「…さっきは、無理だって言ってたじゃねぇか…」



「あぁ、お前はな。」



「は…?」



「柊ではなく、…お前の子分は解放してやるよ。」



敵対チームにはただの卑怯者。
だが人一倍仲間思いの柊。




「だったら、…早くあいつらは解放してくれよ。」



昨日の闇討ちは俺一人がしたんだからあいつらは関係ない…と、悔しそうに眉を顰める。




「解放してやるが、…それはお前次第だ。」




「…どういう意味だよ……?」





「銜えろ。」



柊の後頭部をグッと掴んで、俺の下半身に顔を近づかせる。




「……は、…なに…言って…?」




「ここまでしても分からねぇか?」



先程の柊の表情で、少し勃ち上がっている俺のペニス。
柊の顔にゴリゴリっとズボン越しに擦り付ければ、目を白黒させた後、すぐに嫌そうに顔を歪める。




「…きしょっ、…お前、離せって…っ」


今からさせられることが分かったのか、柊の声は恐怖で震えていた。




「離してもいいが、…そしたら、お前の子分はどうなるか分からねぇぞ。」


柊の子分には、俺の腕のある側近が一人一人付いている。
こんなことをして卑怯者だと言われるかもしれねぇが、それはお互い様だ。


…お前を手に入れられるのなら、手段なんか選らばねぇよ。





「………く…っ」



「どうする?……お前が決めていいぜ?」



俺に服従の意味を込めて、銜えるのか。
断って、自分の大事な子分を半殺しにされるのか。



…聞かなくても、俺は柊がどちらを選ぶのかは分かる。


仲間思いな柊の答えは一つしかない。





「…わ、分かった。分かったから、…あいつらは離してやってくれよ。」



「だったら先に銜えろ。」



「…っ……」



柊は縛られている仲間をチラッと横目で見た後、悔しそうに顔を歪める。




「…やるから、…手、解け。」



「駄目だ。」



「っ、…なら、どうやって…っ。」



「手が使えなくても、口が使えるだろ?」


俺は自分でベルトだけ外すと、柊に口でズボンを脱がせるように命令する。


俺の理不尽な発言に柊は大きな目に涙を溜めた後、意を決したのか、自分から俺のズボンに口を近づけた。


すると柊の子分が、「止めろ、止めて下さい。」と叫び出す。
そんな子分の声がさらに柊の羞恥を増したのか、頬を真っ赤に染める。




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