短編集 | ナノ

 はんぶんこ

はんぶんこ


クールな友達→苛められっ子。攻め視点。ヤンデレ






幼稚園生の時から一緒に居る信二(しんじ)。所謂「腐れ縁」というやつだ。
そんな信二が苛められているのだと最近気が付いた。


信二は気が弱く人見知りをする性格だから、俺以外の友達らしい友達も居なかったと思う。高二になって俺とクラスが離れてしまった所を狙われたのだろう。最近は青痣や擦り傷が、目に見えて増えている。

一言言うべきなのか。助けるべきなのか。


「………」


迷っている。


いつも俺の後ろを雛の様に付いてくる信二だって一応男だ。「お前苛められてるだろ?」と訊けばきっと男のプライドも傷付くだろう。ここは信二が言い出すまで待つべきだろうか。


「………」


いや。
やはり助けるべきだな。
きっとあいつの事だから、俺に言えずにウジウジ悩んでいるんだろう。それとなく話題を振ってから本題に入り、例え信二が嫌だと泣き喚こうが苛めている犯人を聞き出して叩きのめせば解決するだろう。


とりあえず。
放課後にあいつの教室に行くか。





*****




放課後になり、信二が居る教室の中を見れば、あいつは一人で教室の掃除をしていた。


「…………」


小さい身体で重たい机を持ち上げ、後ろへと置いた後、教室の前の方を箒で掃いていた。


「……おい」

「…っ、か、一輝…?!」

「何してんだお前」

「そ、掃除だよ」

「一人か?」

「うん。きょ、今日は俺一人の当番だから…」

「……そうかよ」


下手な嘘吐きやがって。
普通に考えて、一人で教室の掃除をさせるわけねぇだろうが。やはりこいつが苛められているというのは事実なのだろう。


その証拠に…。


「…これは何だ?」

「え?…あ、うわ…っ、」


信二の背中に張り付けてあった「バカ」と書かれた紙。きっと信二は今の今まで気付かなかったのだろう。剥がしたその紙を見て驚き、そして青褪めている。


「…苛めか?」


どう考えたって苛めだろ?
下手に強がらず、白状しちまえよ。

信二は俺の言葉を聞き、一瞬顔を強張らせた後、今にも泣きそうな顔を堪えて、無理やり笑顔を作って見せた。



「ち、違うよ!これ最近友達との間で流行ってるんだよね。」

「………」

「俺もこの前やったんだよ。あはは、やり返されちゃった」

「…ふーん」

「全然気付かなかった。本当、俺って馬鹿だよね。この紙に書かれた通りに…」

「………」

「あはは、…俺にはお似合い、かな?」

「…似合ってねぇよ」






その作り笑いも全部。

お前には似合っていない。





お前は俺の横で笑ってればいいんだよ。

だから。
とりあえず。

犯人をぶっ殺す。






END




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