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「可愛い、寝顔」


疲れてしまっているのだろう。
俺がいくら髪の毛を撫でようと、背中をポンポンと撫でようと起きはしない。気持ち良さそうに寝ている。


「ずるいよなぁ…」


格好よくて、それでいて可愛くて、優しい。
本当に完璧な男だよ、高瀬は。
何で俺を選んでくれたのかは、未だに分からない。分からないけれど、嬉しいのは確かなこと。
本当に俺の学校は、女の子が少なくて良かったと思う。


「女の子には全然適わないだろうし…」


女の子のように柔らかい胸があるわけでもない。優しい匂いがするわけでもない。…ましてや、子供が産めるわけでもない。

まぁ、今更こんなことで悩むくらいならば、元々高瀬とは付き合っていないけど。この悩みはもう解決したのだから、いつまでもウジウジ言っていても仕方のないこと。



「だけどなぁ…」


でも身近に女の子が居ると、ちょっと嫌だ。
やっぱり高瀬は魅力的だ。男の俺から見ても凄い格好いいと思うもん。
俺の学校の女の子は高瀬に手を出す人は居ないけれど、…問題はこの修学旅行中だ。俺達の学校とは別に色々な学校もこの旅館に泊まっているのだ。その中には女子高も混ざっている。きっと高瀬は女の子に声を掛けられるには違いない。



「…………」


女の子に話し掛けられている高瀬を想像すると、凄くムカッときた。ああ、やっぱり俺も人並み以上に嫉妬というものをする男らしい。
…本当に、高瀬のこととなると余裕がなくなる。



「いっそ、俺のものだという印さえ付けれれば…」


そう考えが行き着いた所で、俺の視界に入ってきたのは油性のマジックペン。



「…………」


俺は深く考えるまでもなく、近くにあった油性ペンを手に取る。蓋を開けると、独特の臭いがした。
しかし高瀬は起きる気配すら見せない。

俺はこれはチャンスだと思った。



「高瀬、」


こんなに嫉妬深くて、ごめんな…?





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