…え?何?
今の「おい」って俺に言ったんだよね?
つ、ついに昨日のことで叱声が飛ぶのか…?
俺は恐くて絞り出すように声を出す。
「な、……何?」
「………………」
「……………」
あ、あれ?
返って来ないんだけど?
まさか俺に言ったんじゃなかったのか?
俺は勇気を振り絞って、もう一度高瀬に「何?」と訊く。
「………教科書…」
「……へ?」
「…教科書忘れた…。」
は?何?
“教科書を忘れた?”
何それ?
忘れたんじゃなくて、高瀬は元々持ってくる気もなかったんじゃないか?
…まぁ、そんなこと高瀬に言えるわけもなく俺は頭の中でひたすら考える。
教科書を忘れた=教科書がない=俺は教科書を持っている=俺の教科書を寄こせ
………そうか。
そういうことか。
俺に教科書を寄こせと要求しているのだろうと考えついて、俺は高瀬に新品の教科書を手渡す。
…頼むから、乱暴に扱うなよ。
一年間使う物なんだから。
10/300