「……ん…」
カーテンの隙間から光が差し込んできた。
その明るさに、俺は目を覚ます。
「今、…何時…?」
そして俺はいつも通り、自分の部屋にある目覚まし時計を見ようと、体勢を変える。
「……っ?!」
するとそこにはあるべきはずの棚や机、もちろん目覚まし時計はなく、…その代わりに俺の視界に入ってきたのは、高級そうな棚と…、
…俺を抱き締めるように寝ている高瀬の姿だった。
「…た、かせ…」
あまりの驚きにおもわず大声を出しそうになった。
だけど気持ち良さそうに寝ている高瀬を見て、悲鳴を寸前で抑えられた俺は本当に偉い。
…えっと、それより俺はどうして自分の部屋ではなく高瀬の部屋に居るのだろうか?
昨日は確か……、…高瀬の家に来て、そ、そして…え…っちなことをして、…身体が汚れた俺はお風呂に入りたいと言って、……そこからの記憶がない。
「……でも、俺の身なりは整っているし…。」
そうだ。俺の身体は昨日の破廉恥な行為が全て夢だったかのように、綺麗になっている。
「…もしかして、高瀬が俺を風呂に入れた……?」
いやいや、でも俺は高瀬に嫌だ、って言っていたから…、高瀬は意識のない俺を勝手に風呂に入れたわけではないはずだ。
「うん。多分、…大丈夫だと思う。」
そして俺は隣で寝ている高瀬に視線を向ける。
「……可愛い…」
いつもは強面で凄く格好いいのに、寝顔はこんなに可愛いなんて反則だ。
高瀬は女性との経験がないと言っていたから、きっと高瀬のこの可愛い寝顔を見たのは俺が初めてということだよな…?
そう考えると、嬉しさと優越感が芽生える。
“皆の知らない高瀬の一面を知っているのは、俺だけだ。”
「そうだ。記念に写メを撮ろう。」
そう思った俺は、近くにあった携帯電話を手に取り、カメラ撮影の準備をする。
パシャッ。
シャッターの音が静かな室内に響いてしまったが、高瀬はまだ起きる気配を見せない。
「…可愛い、高瀬…」
そして俺は撮れた高瀬の寝顔写真を見て、思わず顔をニヤけさせてしまう。
そうだ。この写真を待ち受け画面にしよう。
高瀬にも誰にも気付かれないように、コソッと設定しておこう。
「…嬉しいなぁ。」
「……何が?」
「わ…っ?!」
独り言だった言葉に返事をされ、驚く俺。
「た、高瀬…、お、起きたの?」
「あぁ。おはよう、仁湖。」
「あ、うん…。お、おはよう。」
まるでお姫様にするように、高瀬は俺の手を取って、手の甲に優しく唇を落とす。
そんな高瀬の対応に、おもわず顔を赤くしてしまう。
「ごめん高瀬。起こしちゃった…?」
「いや、今起きたばかりだ。」
「そっか。」
…良かった。それなら俺が勝手に寝顔写真を撮っていたことに気付かれていないはずだ。
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