「仁湖、…もう一回…」
「だ、…駄目だって…」
「やだ。」
そんな可愛い言い方しても駄目なものは駄目なのだ。
どんどん近づいてくる高瀬から逃げる俺。高瀬のことは好きだけど、…キスするのって凄く恥ずかしいから苦手だ。
「こ、こら、高瀬…っ」
逃げる俺の上に、まるで大型犬のように跨ってくる高瀬。
「…仁湖は俺と付き合う前、付き合ったらどんなことしたいって考えてた?」
「………え?」
いきなりの質問に俺は考える。
…高瀬と付き合うことを想像していたときは、どんなことをしたいって思っていただろうか?
「…お、…俺は、高瀬と手とか繋いで、…一緒に帰りたいなぁ、…とか、部屋でまったり過ごしたいなぁ、…とかだけど、」
何だかこんなことを本人目の前に言うのって、凄く恥ずかしいんだけど…っ。
高瀬きっと変な風に思っているだろうなぁ、…って、あれ?
「…た、高瀬?」
先程まで普通だったというのに、今の高瀬は凄く顔が赤い。熱でも出てしまったかと思って俺は慌てるのだが、そんな俺をお構いなしに、高瀬はボソリとこう呟いた。
「……お前…、可愛すぎ…っ」
「はぁ…っ?!」
何が?!どこが?!
鼻を押さえて上を向く高瀬に、俺はますます慌てる。
「ど、どうした?もしかして熱の所為で、鼻血出そう…?」
「いや、…熱の所為というか、…仁湖の所為…」
「お、…俺?!」
「俺は仁湖のように、…純粋な願いだけじゃなくて、仁湖に邪な思いをずっと抱いていた。」
「邪…?」
「あぁ。…仁湖、俺がお前に告白したときに言った言葉覚えてるか?」
当たり前だろ、俺が忘れるわけないじゃん。
あんな嬉しいこと言われると思っていなかったんだから…、例え何があっても忘れないよ。
「…お前にキス以上のことしたい、って言っただろ?」
「う、うん。」
確かに高瀬はそう言っていたよな。
あのとき放課後に初めてキスした後…。
でも、…あれ?
「俺達、…キス以上のことしてるだろ?」
「………は…?」
俺の言葉を聞いて、何故か固まる高瀬に俺は首を傾げる。
「仁湖…。キス以上って、何か…、分かってるか?」
「ば、馬鹿にするなよな…!だから、その…、今みたいな、…キスのことだろ?ほら、何て言うの、…でぃ、ディープキスだろ…?」
「…………。」
「…え?…えっ?!何?違うの…?!」
「…………。」
何で高瀬黙りこんでいるんだよ?!
俺別に何も変なこと言ってないよな?!
俺の言っていること間違ってないよな?!
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