天槍のユニカ



単純な願いの隣(21)

 素直にいつも身に着けていようか、それともディルクと顔を合わせるときだけ着けることにしようか悩むところだ。
 ――悩む? いや、煩わしいのなら、普段はしまっておけばいいだけ。イヤリングも、ネックレスも、ほかのアクセサリーも。
 しかし、青金の矢車菊を手のひらで隠せばエリーアスの声が耳の奥によみがえってくる。
『お前にとっても、王太子は特別だってこと』
 ユニカはここにはいない彼に向かってむっと唇を尖らせた。
 特別≠セったとしても、ユニカにはどうしたらいいか分からないのだ。
 何かを持て余している自分を隠すために、ユニカは指輪を覆う手にきゅっと力をこめた。






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