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家族の事情(6)
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「ほう、長居を許してくれるのか」
「……伺いたいことがあるので」
「ふうん? 君が王家の問題に興味を持つなんて意外だ」
「興味があるわけじゃ――」
否定しかけて、ユニカは口を噤む。このまま意地を張っても、エルツェ公爵にからかわれておしまいだ。
興味があるというほど明確な気持ちではないけれど。色々な言葉が積もり積もって気にはなっていた。
身分に見合った自分の役目を見つけられれば、それでいいと言ったレオノーレ。
『偽物』、『陛下の妹君の胎から生まれた娘ではないから』。
そんな彼女が受け持つ役割は公女=B
この好奇心が下卑たものである自覚はある。
しかしレオノーレの言葉の端々から、彼女がユニカと同じもの、あるいは似たようなものを持っている気がするのだ。
そして、ディルクも。
それがなんなのか知りたいという思いは、かすかだが確かにあった。
知ったところでどうしようもないことは分かっている。ユニカはもうじき王族という身分を失い、今度こそこの西の宮に隠れ、王との約束の時を待ちながら平穏に過ごすつもりなのだから。
でも……。
ユニカはきゅっと唇を引き結び、公爵の向かいの席に座った。
「公女さまが陛下に向かって仰ったこと……あれはどういう意味ですか? 公女さまが陛下の妹君の――公妃さまのお産みになった姫君ではないという意味に聞こえましたが」
問いを口にするだけで心臓がどきどきと脈打った。口の中にじわりと唾液が滲んでくる。
平静を装うユニカをやはりにまにましながら見つめ、エルツェ公爵は頬杖をついた。
「そりゃあそう聞こえるだろうね。ああも大きな声で言われては隠しようもないし」
「公国の貴族の方々も、公爵や外務卿も、あまり驚いているようには見えませんでした。……公女さまの態度には驚かれていたようだけど」
「あれは我々の世代では公然の秘密。そして次代には受け継がせないと決めた秘密だから。でもまあ、王太子殿下や公女殿下にえらく気に入られている君は、知った上で秘密を守る一人になってくれた方がよさそうだ。ああ、エリュゼ。これから話すことは他言無用だよ。ユニカを我が邸に招く日取りの相談は、この話のあとにしようか」
昼食会での出来事を知らないエリュゼは、ユニカと公爵の話題にただ戸惑っていた。
「わたくしが聞かない方がよいお話でしたら、別室で待ちますが……」
「そうは言うけど、君も聞きたそうに見えるよ」
そして図星を突かれ赤面する。結局席を立たないところをみるに、ユニカとともに話を聞くようだ。
ディディエンが公爵のための温かい葡萄酒と、ユニカと姉のためのハーブティーを持ってきた。
リータとフラレイはすでに部屋をさがらせてある。ディディエンも控えの間へさがろうとしたが、公爵は給仕をして貰わなくちゃと言って彼女を引き留めた。ユニカが公爵に続いて頷いて見せると、リスのような侍女は部屋の隅に椅子を置いてちょこんと待機する。
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