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日々樹渉のレア顔

氷鷹くんに用事があって演劇部へと向かっていた放課後。急ぎではないのだが、友也くんにもRa*bitsのことで聞きたいことがあったからいいかなと思っていた。
だが訪れた演劇部に人はいない。もしかしてもう解散してしまったのだろうか。それともまだ集まっていない?流石に日々樹先輩くらいはいないだろうか。「失礼しまーす」と小さくつぶやきながら部室内へと入る。というか鍵がかかっていないから誰かしらいるだろう。
明かりは点いているものの、物が多く、室内は薄暗い印象が抱かれる。というかこの部屋の隅々に積まれた物はなんだろうか。


「おや、双葉さんではありませんか」
「ひっ」


誰かいるだろうと思っていたが、現在確認できるのは自分自身だけだったので、まさか声をかけられるとは思わず全身で驚いてしまう。
びくりと身体を揺らせば、近づいていた積み上げられた荷へぶつかった。

ごんっ

低く鈍い音がした。あ、これ、終わった…。荷が崩れてくる覚悟をし、目を瞑る。もはや足は動かないし、このまま押しつぶされるんだろうな。
そんな事を考えていると、ぐっと身体が引っ張られる感覚。ふわりと身体が浮いた次の瞬間、背中に衝撃を受けた。同時に荷物が崩れる音がする。あまり重たいものがなかったのか、そこそこ軽い音が連続して起こっただけだった。
背中に衝撃は受けたものの、不思議と背中だけで頭に衝撃はない。むしろ少し柔らかいような…?
音が落ち着いたところでそっと目を開ける。ゆるゆるとした視界がしっかりと形を捉えるようになれば、近くにいるものが“誰”だか認識をしてきた。


「日々樹、せんぱ、い?」

さらりとしたシルバーの髪が私に落ちてきている。先輩の向こうには、心許ないと思っていた照明が見えた。
そしてその手前。一番私に近いところに位置している日々樹先輩は、目を見開いて、頬を赤く染めていて。


「えっ……と、です、ね」


見たとことのない顔。どもる声。いや、どうしてそんなことになっているんですか。



―――――――
助けたはいいけど、思ったより顔が近くてびっくりしちゃったあなたの日々樹渉です!



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