▼ 01
ピチュチュチュ、と小鳥の囀りが耳に入る。二度寝したい気持ちをグッと抑えてむくりと起き上がった。
『ふぁあ……』
「おっ、起きたか」
『んー…はよ、陽弥』
「おはよ、ほら。朝飯作ったから食おうぜ」
『あい…』
トタトタと顔を洗いに行き、また戻ると陽弥がご飯を目の前にして待ってくれていた。ストンとテーブルの前に座り、パチンと手を合わせる。
『では、いただきます』
「いただきまーす」
ご飯にお味噌汁に玉子焼き。簡単なメニューだがこれで充分なのだ。うん、味噌加減もいい。
『毎朝ありがとね』
「李卯には任せられねーからな」
『……う、』
「ははっ、わりいって!ほら、早く食わねえと時間なくなるぞ。今日はあそこに行くんだろ?」
陽弥に指摘され慌てて玉子焼きを口に運ぶ。もぐもぐと口を動かしながら陽弥の言葉にこくりと頷いた。
『っふー、ごちそーさまあ』
「はい、お粗末様。んじゃ支度しとけなー」
『んー』
支度、と言っても着替えるだけなのだが。しゅぱっと着替えて陽弥が食器を洗い終わるのを待つ。
「終わったぞー」
『んじゃ行こっか』
スクッと立ち、私たちはその場から消えた。
――――
「もー!夜ト!何してるんですか!」
「いーよひよりん!あたしたちも暇してたからさ〜っ」
「そうそう!どーせ依頼も来ないんだしゴロゴロしとこーぜぇ」
「っとにもー…」
そんないつもの光景に、壱岐ひよりはため息を吐いた。すると、夜トが何かを感じ取ったのかガバリと勢いよく起きあがる。
小福ももしかして…と目をキラキラとさせている。
「どうした、」
"の"、その一文字まで続くことなく遮られた。一体何に?その答えは―――
リン、とどこからか鈴の音が聞こえた気がする。それと共にふわりと目の前に現れたのは女の子と男の人。
『……っと、』
「ん…?あれ、って…禍津神?」
『え、あ……ほんとだ。何でこふっちゃんとこに…』
パチクリと目を瞬かせていると、一瞬にして何かに抱きつかれた。ぱちぱちと瞬きして、今の状況を整理する。あ、陽弥が怒鳴ってる。
「っ…今まで、どこ居たんだよ…っ!」
『…夜ト………?』
「オレが、…んだけ、どんだけ探したと思ってんだよ…」
小さく震える夜トの背にソッと腕を回す。トン、トン、と宥めるように一定のリズムを保ったそれは次第に夜トの震えを治めていた。
『ね、ちょっと夜トどいて…?』
「いやだ」
『いやだじゃなくて…私はこふっちゃんに、』
「りいちゃん!!!」
後ろから強烈な痛みに襲われた。犯人なんて分かってる。前からは夜ト、後ろからはこふっちゃん。だめだ、死にそう。
そんなときに助けてくれるのはやっぱり陽弥と大黒で。
大黒はこふっちゃんを引き離し、陽弥は乱暴に夜トを引き剥がした。
ふう、と締め付けから解放され一息吐く。そしてまっすぐに夜トとこふっちゃん、大黒を見つめて、
『……久しぶり!』
ふにゃりと笑みを向けたのだった。
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