君だけに優しい世界

優しい風が吹いた。少女が長い髪を靡かせながら、空を見上げた。今日もまた晴天で、少女の心にも真っ青な空が広がっているように思えた。悲しみを一歩ずつ乗り越えた少女は、淵に立って祈りを捧げ、何かを願った。それは世界を思い、散っていったものたちへの祈り。そして――これから待ち受けるものへの願い。

少女は友と共に、その場所を訪れた。前もそうしたように、花を手向ける。それはもう会えない人たちへの想いが詰まった贈り物だ。これから、自分はどれだけ笑うだろうか。どれだけ泣くのだろうか。その全てを、彼らは見ていてくれるだろう。挫けそうになったら彼らはそっと背を押してくれるだろう。躓きかけてしまったのなら、手を伸ばしてくれるだろう。仕方ないな、と笑ったままで。


悲しみの先に世界がある。
世界の先に希望がある。
希望の先に未来がある。

優しさが未来を呼ぶというのなら、私は心に花を植えよう。
世界の果てへと行ってしまったあなたたちへ捧げる花束を作る為に。



だからどうか、見ていて欲しい。
怒りでも、憎しみでもない、強い感情があなたにだけ優しかった世界を変えるその時まで。


title:夜途



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