雪村、その他数人女体化で高校生のはなしでみんな雷門にかよっている設定。
雨宮太陽はイライラしていた。五月晴れの暖かい中庭を舌打ちしながら通る。この先にはお気に入りの一人になれる場所があるので、そこへ行くのだ。
「 あーもう!イライラする…」
そうつぶやきながら中庭の奥の校舎とフェンスのはしのスペースにいくと、そこには先客がいた。
黒のキャップに、白いパーカーとジャージ。紺の髪の毛の人だった。髪の毛をキャップに入れ込み、使い込まれたサッカーボールでリフティングをしている。サッカー経験者なのだろう、時々アクロバティックなプレイもまぜてボールを蹴っている。
いっけん小柄に見えるがボールには力強さがあり、とても綺麗で見ごたえがあった。
雨宮はイライラしていたのも忘れるかのように見惚れていた。
「…なに?」
「へっ!?」
気がつくとその子はリフティングをやめ、じっと雨宮のほうを怪訝そうに見ながら話しかけてきた。
「君を見てたんだ。君、すごいね!君サッカーしてるよね?僕もしてるんだ!!ここもいいよね!人がこないし、ボールを蹴れるスペースはあるしっ!僕のお気に入りの場所なんだー!」
「そうなんだ…ここ、お気に入りの場所なら俺が使っちゃダメだったか?ダメなら違うとこいくし…」
「全然!大丈夫だよ!!気にしないで、あ、僕は雨宮太陽。新雲学園のFWでサッカーしてたんだ!」
若干日本語がおかしくなってる気がするけどそんなのも訂正する気もおきないくらいにはテンションがあがっていて雨宮はすごい勢いで話していた。
「俺は、白恋中でFWやってた。今日は今度俺、雷門に転校するからその手続きで…」
と、その子が話している最中だった。
「豹華っーー!」
母親が、探しにきたようだった。
「げ、ごめん、じゃあ。」
というとその子は風のように走っていった。
「足もはやいんだ……」
つぶやくように言った雨宮はとあることに気がついた。
「…あっ、名字なんなんだろ....。
んー、まっいっか、どうせサッカー部にくるだろうし、背からして多分一年生だよね!豹華くんかー、ライバルになるかなー!楽しみー!」
一週間ほどしてのことだった。
「おはよー、」
教室に、はいると白竜がなにやらシュウに飛び跳ねる勢いで話しかけていた。いつもは剣城剣城言ってる白竜がめずらしく違う人の話題のようだ。
「おはよー、白竜、シュウ。
そんなに、テンション高くどうしたの?
」
挨拶で雨宮に気がついた二人はくるっとこちらを、向いて挨拶をする。
「おはよう、太陽。」
「雨宮もききたいか!?ききたいよな!?」
「うん。聞きたいなぁ。」
そう言うと白竜はとても嬉しそうに話しはじめた。
ここからは白竜の独壇場である。
「実はな……女子サッカー部に転校生がきたんだ!!
誰だと思「女子!?!?」」
「あぁ、雪村先輩は女子だが?どうかした「先輩!?!?」」
「なんだんだよ!?さっきから!俺が話してるのに遮って…!転校してきたのは
雪村先輩、2年生女子だ!ちゃんと最後まで聞けって!もう!」
「男子だとおもってた....」
ここで雨宮は考える。あの時の子と母親が、よんでいた名前。
「……豹華…雪村....……雪村 豹華....?
…っっっ!あーーー!!!!白恋の!女子にして10番のエースにいた、雪国の、ストライカー!!」
そう、雪村豹華といえば北海道の名門白恋中学のエースストライカーなのだ。ディフェンス力の高い白恋の一瞬の鋭い攻撃を仕掛けてくるのはいつも彼女だ。去年のフットボールフロンティアは準決勝で雷門にやぶれ白恋は3位でおわったが、あの試合は勝つか負けるかのいい勝負だった。
いきなりぶつぶつ言って、突然叫んだ僕に若干引きながら白竜が
「そうなんだよ!あの白恋のストライカー!これから一緒にプレイするのだ楽しみだ!」
と嬉しそうに笑う。
雷門には今4人のFWがいる。2年の倉間と瞬木、1年に剣城と白竜。
スリートップだったり、誰か1人がMFにさがりスリートップや、時にはトップ1人で、ほかはMFやディフェンスに回すなど様々な攻撃をしているが、全体的にFWが多いからかほかのチームよりも高い攻撃力を誇っている。
そこに雪村が、参戦するのだから面白いことになるだろう。
「羨ましいなぁ、僕も一緒にプレーしたいよ。」
「ふふん、いいだろう。
でも今日は男女混合練習だから会えるんじゃないのか?」
ここでぼそっと言われたことにはっとする。ここ、雷門では火曜日と金曜日、日曜日は男女混合練習を行なっている。
そして今日は火曜日、男女混合練習の日なのである。
「やっった!!!!!」
こういうと雨宮はテンションがあがり、
午後練までずっとワクワクがとまらなかったそうだ。
キーンコーンカーンコーン
「よっし!」
そういうと雨宮はカバンを引っ掴んで部室へ走る。いつも走っていく天馬も追い抜かしトップスピードに乗ったあたりだった。
目の前には水色の髪と黒の髪の女子倉間先輩と浜野先輩。....の間、紺の髪の女子。
「....!!!ゆっきっむらさんっ!!!」
三人が振り向く....がしかし雨宮はすぐには止まれなかった。
「ちょっっ、やば、とまんな…あぶっな....っい!!」
このままでは雪村さんにぶつかるっ!と思った時だった。黒い影が横に走ってきて雨宮の襟首をつかむ。
「っっっ、ぐえっ」
「アホか。」
「…ゲホッゲホッ....京ちゃん!!!」
雨宮と同じペースで走ってきたのは女子サッカーエースストライカー剣城 京。
中学の時元シードだったためか改造制服を身につけていたなごりか今でも一風かわった制服をきている。紺の長い髪をポニーテールのようにくくっている。口数が少ない彼女だが、しっかりもので白竜や天馬のストッパーだ。
「アホかお前。このままいけば倉間先輩や、浜野先輩、雪村先輩に突っ込んでたんだぞ、 わかってんのか、お前は男子で先輩らは女子だ、どっちが怪我するかとか考えろてか、廊下走るな。」
「ははっ、そんくらいにしてあげなよ剣城ー。あたしらも剣城のおかげで怪我してないしー!ピンピンよー!」
剣城の説教を止めたのは浜野。倉間は呆れでこっちを見ている。
「次からは気をつけまっーす!」
雨宮は調子よく返事をするとくるっと雪村のほうへ振り向く。
「ゆっきっむらさん!!僕のこと覚えてます!?」
「....!?あ、ああ、手続きの時にいた、オレンジ....えっと、雨宮?」
「!そうです、雨宮!よろしく!」
前は気がつかなかったが、雪村はロングだったであろう髪をバッサリきってショートカットにしている。道理でわからなかったわけだ。
それよりも、雨宮は一応自分が覚えてもらっていたことに歓喜する。
「覚えててくれたんだ!よかった!」
「そんくらいにしとけ。.....そろそろいかねーと遅れる。」
そう言って話をさえぎり歩きだしたのは倉間だ。
「そうですね。行きましょう。雪村先輩も。」
そう言うのは剣城。
「えっー、ううぅ....。雪村さん、またね!あとでね!」
しかたなく雨宮は男子部室へ走る。キャプテン天馬は優しいようだが、遅刻などには厳しくはやくいかなければグランド10周がまっている。
またまだ聞きたいこともあったが諦める。今日は混合練習だし、時間はまだまだあるのだ。なんとかなる。そう考えながら部室へと急ぐ。
「混合練楽しみだなぁ....!!!」
「おねがいしまっーーーす!!!!」
挨拶から始まった混合練習。少し前まで雨が降っていたから少しむしむしするものの、サッカーは十分できそうだ。
今日は男子チームのバランスを考えたいということで、練習試合をする。
女子のFWには剣城と、雪村がはいっている。雪村の力を見るつもりだろう。
ピッーーーーーー
試合開始のホイッスル。 ボールを持ってるのは女子チームだ。
剣城がスピードをつけて雪村とあがってくる。
組んですぐにしてはうまくボールがまわっている。
ここからはボールの取り合いだった。点が決まらず0-0のまま後半10分、やっと雪村と雨宮のマッチアップである。
「雪村さんとは初だね。抜かせないよ!」
「....っ、抜かせてもらうっ!!」
少し息遣いが荒いなぁと思いつつ抜かせたくはないので本気でディフェンスする。雪村さんが何度かフェイントをし、抜かそうとした時だった。
ぐらっと雪村の身体が傾く。そのままフラッと芝に倒れ込んでいく。
「ちょ、え!?
倒れるっ。」
ドサッッ!!!
「雪村!?」「太陽くん!?!?」
みんな急いで走ってくる。
「だいじょ〜ぶ〜....!」
雨宮は雪村の身体を抱き抱え自分の身体を下にしてなんとか抱きとめることに成功している。
腕のなかには汗を異常なくらいかいた雪村。
「今日はむしむししてるし、北海道でサッカーしてたからまだ身体が慣れてなかったのか。」
そういうのは剣城だ。
「大丈夫ですか!?私保健室にっ....」
と葵がタオルとスポーツドリンクを持ってくる。
「あ、空野さん、僕、雪村さんを保健室に連れていくよ。大丈夫。」
「でもっ」
「大丈夫だって!みんなも続きしててー!
そういうと、雨宮は雪村の身体を抱き上げ歩き出す。
保健室は結構近くにあるので、すぐだ。
抱き上げて見ると腕も身体も小さめでやっぱり女の子なんだと感じる。
閉じられた目は長いまつ毛があり、少しあいた唇は艶があって綺麗だ。
顔にへばりついていた、彼女を髪をはらいふと髪の毛を何故切ったんだろうと考える。紺の髪は走ると風になびき綺麗だったのにと。
「って、僕はなんてこと考えてるんだろ。」
そうこう考えているうちに保健室につく。
「こんにちはっー、先生ー!」
「あら、どうしたの」
保健室には音無先生。
「先生こそー!保健室になんで?」
「保健室の先生、今日午後からいないのよ、だから私がお留守番。」
「そうなんだ、あのね、雪村さんが倒れちゃって無理してたみたい。」
そういうと雨宮は雪村をベッドに寝かせる。
「まぁ、雪村さん、白恋からきて引越しの片付けを夜遅くまでしてるって聞いたから寝不足だったのかしら。ありがとう、太陽くん。あとは任せて。」
「おねがいしまーす。」
雨宮はそういうと保健室をでる。
少しして自分のジャージを雪村にかけたままにしているとことに気づく。
「まっ、いっか....
はやく元気になるといいなぁ、雪村さん。」
そうつぶやくと雨宮はグランドへ急ぐ。これが、きっかけで小さな恋が始まるとも気がつかずに。