「お前はどうしたい?」

こういう質問は苦手だ。どうしたいって、俺は坊や子猫さん、みんなと同じでいい。自分が何をしたいのかなんて解らない。解らないから、誰か決めてくれ。俺はそれに従うから。

「お前はどうしたい?」

嘘ばかり吐いて自分を偽って生きていたら、自分のことがさっぱり解らなくなった。気持ちも何もかも、全く解らない。解らないというよりも、失くしてしまった、という方が正しいかもしれない。
アホやな、俺。

誰か、見つけて











「さむぅ」

昼休み、ちょっとした問題が起きて逃げてきた屋上。くそ寒い。

「こっちに逃げてきたんは失敗やったか…?」

扉の向こう、階下から自分の名前を呼ぶ声がする。おー、こわこわ。寒いけどしばらくここにいよう。

「うー、さっむいぃ…」

両腕を擦りながら風の当たらない場所を探す、けど、どこに居ても冷たい風になぶられるようだ。
結局また扉のところへ戻ってきて座り込んだ。

もう帰りたい。帰れないけど。


「あ、志摩」

「ひょあ!」

突然扉が開いて思わず飛び上がる。ついでに変な声が出た。

「な、なんや…奥村くんやないか…」

「女の子たちかと思ってびっくりした?」

安堵してほっと息をつくと、奥村くんがにやにやしながら図星ついてきた。
その通りですが何か!

「奥村くんって意外といじわるなんやね」

むっとした顔でそう言うと、奥村くんは「おもしれー顔」とけらけら笑った。
たっのしそーやな…

「それにしても志摩、二股とは最低だなー」

ひとしきり笑ったあと、奥村くんはそう言ってわざとらしくため息を吐いた。
え、なんで知っとるん

「二人の女子が追い掛けてたらわかるだろ」

「あー、なるほど…」

たしかにそうだ。いやでも、あー…うん、そうだな。あんだけ修羅場っぽい雰囲気出してたしな。きっと周りのみんなにもバレてるんだろう。戻りづら。

「かわいそーに、片方泣いてたぜー?」

「あー…」

めんどくさ。そう思ってしまった自分は心底最低な人間だと思った。今更か。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、奥村くんがとんでもないことを言い出した。

「あんまり可哀想だから、絶対志摩つれてきて殴らせてやるって約束しちゃったよ」

「ええええええええ」

俺は勢いよくあとずさった。
な ん て こ っ た 。
奥村くんがやたらにやにやと笑っていた理由がわかった。
今だってもう笑いを堪えてぷるぷるしてる状態だ。

「冗談やろ?」

頬が引きつる。寒いはずなのに、一筋の汗が俺の首筋に伝った。
そして堪え切れなくなった奥村くんがにんまりと目を細め唇の両端を吊り上げ、手を広げて

飛び掛かってきた。

「おとなしくお縄に付けええええ!!」

「いややああああああ!!!」

「俺から逃げられると…思うなよ」

「悪魔ああああああ!!!!!!」


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