結果から言うと、俺は二人の女子にフラれた。

あのあと奥村くんの手によって引きずられて女子の前に放り出された俺は、彼女たちにめっさ責め立てられたあげく一発ずつ殴られた。最悪だ……まあ自分が悪いんだけれど。

「てか、そろそろ笑うのやめてくれへん?」

そう、さっきから奥村くんはずっと笑ってる。携帯を握り締めて。もう爆笑。

「っふふ…いや、だって、あははっ!」

「はぁ…」

そんなに面白かっただろうか?
…まあ、俺が奥村くんの立場だったら面白くて仕方なかったかもしれない。いやでもフラれたやつをこんなに笑ったりはしない、と思う。

「うひひ、お前も見る?」

少し落ち着いた奥村くんが、握っていた携帯を開けたり閉じたりする。

「?、おん…」

あれ?さっきのことで笑っていたんじゃなかったのか?
首を傾げつつ、見るという意志を示す。

奥村くんが携帯を開き、画面を見せてきた。

「!!!なんっやこれ!!!!」

そこには女の子に殴られた瞬間の俺が写っていた。

「面白いだろ?」

にんまり、奥村くんが目を細め唇の両端を吊り上げる。さっきと同じ、いやそれ以上に悪魔みたいな笑みだった。みたいっていうか、悪魔なんだけど。

「なんっ、撮ってんねん!!」

恥ずかしさやらなんやらで勢いよく携帯を奪、おうとしたけど奥村くんの歪みねえ反射神経により見事に失敗した。

「ちょっ、!」

その勢いで体勢を崩す。…かっこわるすぎやろ俺。

そんな俺を見てか、ははっ、とまた奥村くんが笑った。それにむっとして顔を上げると、いきなり冷たい風が吹き付けてきて思わずぎゅっと目を瞑った。

「これに懲りたらもう二股なんかすんなよ」

目蓋を上げるとそこにはもう奥村くんはいなくて、開け放たれた教室の窓が冷たい空気を吸い込んでいるだけだった。

なんだか、弟を諭す兄のような優しげな声で、なんていうか、うぅん、

「…かっこよすぎるだろ奥村くん…」

とりあえずここが二階だと言うことには突っ込まないことにした。


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