8.屯所襲撃事件2
あぁ···そういうことか···。


今、真選組屯所が襲われているの攘夷浪士達に情報が密告されていたから。


なら、みんなが向かったアジトはカモフラージュ?狙いは元々真選組屯所?


そもそも密告したのは目の前にいる美咲??


ぁあ!もう!!
一気に色んなこと起こりすぎて頭がついていかない。


「信じられないって顔してるね」

「まぁね···」

「元々ね、真選組潰すつもりだったの。でもなるちゃんがいけないのよ?」

「は?私?」


え?
元々潰す予定だったけど、私が居たから早まったとか?なんで?


「なるちゃんがいない間、私週5で女中の仕事してて、そして沖田さんのお世話もしてたんだよ?でも沖田さん全く私になびいてくれなかった。なのになに?なるちゃんが帰ってきた途端、2人は付き合ってるんだもん。あの時好きじゃないって言ってたのに···」

「あの時は···まだ!」

「凄いムカついた。私より可愛くないし美人でもないし、スタイルも良くない。なのになんであの綺麗でカッコイイ人の隣に立てるの?私の方が相応しいわ」

「·····」


あぁ、銀ちゃんの言う通りだよ。美人の裏の顔は怖いって···。


「だからね、なるちゃんを殺すため一緒に屯所も潰したらいいんじゃないかって!」



元々潰すつもりだったけど、私も殺したいから一緒に襲ったって?あぁそうだよね、美咲がここに居ないことがバレなければ、私が死んだら敵襲に殺されたとかしか思わないもんね。


でも襲うなら前みたいに買出し中に襲ったほうが良くない?


「ちなみに皆が向かったアジトには攘夷浪士は1人もいないわ···」

「みんなが気づいて帰ってくるまでに私を殺そうって魂胆なの?」

「そうよ。すぐに終わると思ってたのに、刀が使えるなんて初知りだわ。でもこの数、1人で相手できるの?」


私を囲む攘夷浪士。数は数十人ってとこかな。


私···こんなとこで死ぬつもりでこっちの世界に戻ってきたわけじゃないんだけどな。


私は刀を握り直す。


「いい声で死んでね」


美咲のその言葉で一斉に襲いかかってくる攘夷浪士。私は五感全部を集中させ、襲いかかってくる攘夷浪士を斬る。


はやく、早くて、沖田さん、みんな気づいてそっちはハズレだって···屯所が危ないって。


銀ちゃんたちも早く来て、じゃないと私本当に殺られる···!



もう何人斬ったのだろうか···。私の周りには足の筋や手の筋を斬られ動けなくなっている浪士たちが転がっている。


高杉たちの船でも私は刀を握った時もこんなに人を斬ったことはなかった。返り血で私の服は血塗れだったし、なにより手に付いた血に眩暈がしそうだった。


「へぇ結構やるのね」


きっとこの中で1番出来るのは美咲の隣にいる人一番身体がでかい、男の人。


「やっちゃって···」


きっとこの人には刀1本じゃ太刀打ちできない。



私は落ちている刀を拾い、2本で闘うことに決めた。私を見てニタァと笑う男に不気味さを覚える。鉄と鉄がぶつかり合う鈍い音だけが私の耳に残る。


「·····っ!」

「私が何もしないと思った?」

「美···咲···っ!」


一瞬だった。美咲に左肩を一突きされたのだ。
私が美咲の近くに誘導されているように攻撃を受けていたのだ。相手の一撃一撃が重くて、美咲の元に誘導されていることに気づかなかった。


「なるちゃん前に私に言ってたよね?左肩に大きな怪我をしたって···。どんな怪我か知らないけど、刺してみたの」


そう言う美咲の顔は凄くイキイキしていた。あー、山崎さんや他の隊士のみなさん、美人だ女神だと言っていたけど、本当の美咲の笑顔はコレだよ。悪魔の顔だよ。


「私の相手もして欲しいかな!」

「···っだ!」


私は大男に左肩を押さえつけられながら地面に叩きつけられた。大男の刀は私の左肩に、私の刀は相手の大男の首元に突きつけていた。


緊張で息が上がる。


あ、パトカーの音が聞こえる。真選組のみんな気づていて駆けつけてくれたのかな···。あと神楽の私の名前を呼ぶ大きな声が聞こえる。銀ちゃんだけじゃなくて、万事屋皆で来てくれたのかな?


「···ッチ!もう来たのか」


大男もパトカーのサイレンの音が聞こえたのか舌打ちをする。


「美咲どうする?」

「真選組の目ので殺すのもアリよね。あの沖田さんの目の前でなるちゃんを殺したらどんな顔するんだろう」


耳障りな笑い声で笑う美咲。ただのサイコパスじゃん。


「私は殺されないから!」


私はそう言い大男の首元に突きつけていた刀を相手の肩に突き刺す。


「このアマァ!」

「っ"ぁあ"!!」


美咲に刺されていた傷口に刀を突き刺され、肉を抉るように刀を動かされる。今まで出したことの無い声が私の喉から出る。


「無様ね···。ねぇ、なるちゃん。聞きたいことがあるの。幼馴染みの美咲ちゃんってどんな子?私と一緒?違うよね?私より美人じゃないでしょ?性格もなるちゃんと一緒で酷いのよね?あと日本舞踊も習ってたんだよね?上手?私の方が上手よね?」


なにこいつ···。なんでも自分が1番がいいのかよ。というか、アンタが踊ってる姿なんて見たことないわ!


見たとしても性格も顔も全て私の幼馴染みの美咲のほうが断然いい。断トツで。


「なるちゃんの幼馴染みだもん。大したことないよね」


私の幼馴染みだからって勝手にランク下げんな。


「肩の血が止まらないね···。出血多量で死んじゃうかも」

「楽し··そうだね···」

「うん、嫌いな子が痛めつけられてるのを見るのは本当に楽しい」

「へぇー」

「全部なるちゃんが悪い。私より劣ってるくせに真選組の皆に愛されてるなるちゃん
が···」

「勝手に妬まないで欲しい。だいたい敵のくせに愛されたいとか···都合良すぎる!」


私は大男に無理矢理立ち上がらされ、美咲の前に立たされる。


「本当に生意気」


頬にピリッとした痛みが走る。


爪長いんだよ···そんなんで女中の仕事してんな


爪が長い美咲に頬を殴られはしたが、私は怯まない。美咲を睨む。もう少しだけ時間稼ぎが出来ればみんなが来てくれる。


「いたアル!!」


ふと聞こえた神楽の声。目線を声の方へ向けると浪士たちをなぎ倒してくる万事屋一行と、近藤さん土方さん···そして初めて見る焦った表情の沖田さんだった。




美人の裏の顔は最悪
(···なるさん)(あの血の量ヤベぇぞ)

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