私が目を開けた先に広がっていたのは1面田んぼだった。
戻れてない?いや、戻れてないなら後ろから万事屋の3人がうるさいはずだ。後ろからさっきまで聞きなれたうるさい声が聞こえないってことは、きっと目の前の風景は、私が17年間生きてきた町だ。
···うまくいったんだ。
ってか、家に帰ってお風呂入りたい。田んぼの泥臭い。
「なるか?」
「···お、おじい、ちゃん」
私が田んぼの畦道ボーッと立っていると、後ろから聞きなれた大好きな声が聞こえた。私に剣術を教えてくれた1人、私の祖父だった。
「おかえり」
「···っ、た、ただいまっ!」
家族に会えたことが何よりこっちの世界に戻ってきた実感が湧いて、嬉しかった。
「帰るかぁ···」
「うん」
私は、おじいちゃんと並んで帰る。その際、近所の人に会って、「身体はもう大丈夫なのか?」と尋ねられた。私はよく分からなかったけど、とりあえず「大丈夫」と答えた。
家に帰ると、お母さんは仕事から帰って来ておらず、私はお風呂の準備がてら、先にお風呂に入ることにした。
私が銀魂の世界にいってから数ヶ月経っていたが、こっちではどのくらい経ったのだろうか···。あの感じだと1週間?2週間?お風呂入ったらおじいちゃんに聞こ。
万事屋のみんなは無事にかぶき町に帰れたかな?真選組はどうしてるのかな?また私が攘夷浪士に攫われたとかなってないかな?置き手紙、沖田さん辺りが見つけてそうだな、あの人、私の部屋勝手に入ってゲームしてるし···。
みんなに会いたいな···
まだ帰ってきて数時間なのに···。
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お風呂から上がると、台所からお母さんの声がした。
「お母さん!」
「なる、おかえり」
おじいちゃんもお母さんもなんで···なんで怒らないんだろう。どうして優しい声でおかえりって言ってくれるのだろう。私は思わずお母さんに抱きついた。
「···うっ··ひ、···2人ともありがとう」
私は大声をあげて泣いた。こんなに泣いたのはいつぶりだろうか?ミツバさんが亡くなった時かな?
お母さんは私を優しく抱きとめ優しい手つきで頭を撫でてくれた、余計に涙がでた。
その後、私は夜ご飯の準備を手伝い、3人で夜ご飯を食べた。
ご飯を食べている最中に、聞かされたのは私が消息を経ってから今日で2週間。その間、2人は警察に失踪届は出さなかったらしい。普通出すよね?とは思ったが、私のスマホのGPSが忽然とと私が落ちた田んぼ付近で消えていたらしい。そして、この町には昔から神隠しの言い伝えがあるようで···え?今更そういう設定?はい?ってなったけど、敢えてツッこまなかった。おじいちゃんはそういう類を信じるタイプなので、きっと信じたんだろうな。あと、幼馴染みの美咲が私が田んぼから落ちた音を聞いたらしく、直ぐに落ちた田んぼに戻ってきたが、私の姿だけなく、自転車と食べかけていたクレープだけ田んぼにあったらしい。
私は、学校や近所の人達には2週間病気という事になっているらしい。私が忽然と姿を消したことを知っているのは、お母さんとおじいちゃん、そして幼馴染みとその家族だけである。
「それでなるはどこに行ってたんじゃ?」
「···漫画の世界···侍の世界」
「侍か···」
今度は私が隅々まで喋る番だった。
銀魂の世界で良くしてもらったこと、そして刀を握り、人を殺してはいないが、斬ったこと。
その事に関して、少し驚いた顔をしていたおじいちゃんだが、私をいつも慰める時の顔になった。
「そうか···。なるが決めたことなら何も言わん。護りたいモンがあったのじゃろ?」
「···うん」
最初は、闘っている神楽と新八くんの足手まといになりたくなかった。なにより殺らないと殺られていた。
2回目は、木刀だけどお妙さんの笑顔を護りたかった、
3回目は、近藤さんを···私の居場所であった真選組を護りたかった。
「ならもう迷うな···刀を···剣を握る理由を···」
「···うん」
そうだ、私が、私が剣を握ったのは···剣術を振る舞うおじいちゃんと···お父さんの笑顔を見たかったから···剣術が大好きだから。
「なる、明後日、おばあちゃんの三回忌なの」
「うん、カレンダーみて思った」
「みんな来るわ···」
「うん、お母さんあのね···」
私は、ある決意をお母さんに話す。
「大丈夫かな···」
「大丈夫。お母さんもおじいちゃんもついてる。だから笑って」
お母さんは強い。
私が悩んでることも知ってるし、悩みの種が、自分が愛している男なのだから···。お母さんみたいに、強い人に私もなれるかな···ううん、なりたいな···。
あー!!にしても明後日嫌だな···。
久しぶりに寝たベッドがお日様の香りがして、気持ちよく深い眠りにつくことが出来た。
ただいま
(近藤さん!土方さん!なるが何処にもいねぇ!)