9.大王様降臨




...........





あれ?
ねぇ?あれは本当に3対3ですごい運動神経で動き回ってた日向?
下手くそというのは聞いていたし、周りの部員よりあきらかに上手くないとは思っていたけど、これは酷い。



全く周りが見えてない.....



大地さんの真正面のボールを取ったり、田中さんにぶつかったり、助走で躓いたり...正直いって見てられない。





第1セット、青城がマッチポイントでやっと烏野の得点が動いたと思ったら、次サーブは日向...





.....日向?





「潔子さん、私、日向が影山の後頭部にサーブ当てる未来が見えます」
「まさか...さすがに...あ」
「んん!?まっ....!」



やばい、笑いそう...え?ま?マジか....


私が予想した通り、日向のサーブが影山の後頭部にピンポイントで当たった。



一瞬見えた影山の顔は、この世を滅ぼしにきた鬼みたいな顔してて、少し鳥肌がたった。



田中さんと月島は盛大に笑ってるけど、当てた当方人の日向は顔が死んでいる。影山が鬼のような形相で日向を壁に追い込み、圧力をかけて迫ってる。



あれはやばいな、私があんなことされたら多分泣く。



「とっとと通常運転に戻れバカヤローッ!!!」



影山は大きな声でそれだけ言ってベンチに戻ってきた。



「頭大丈夫?」
「あぁ」
「アイシングあるけど少し冷やしたら?はい」
「...さんきゅ」


日向が後頭部にぶつけてしまった時に笑いながら私はアイシングを作っていたのだ。優しいね、私。



田中さんが日向のことを励ました言葉が、結構いいもので、喧嘩早いところもあるけど、田中さんって、先輩に案外向いてるのかなって思った。ま、先輩なんですけど...




2セット目、プレッシャーが無くなった日向は、素早い動きで青城のブロック陣を切り開いていく。



これが影山が言っていた、囮...



日向のおかけでブロックが分散されている。日向が上手く機能しているおかけで、烏野は県ベスト4の青城から1セット取り返した。



す、すごい.....





「...青城に...影山みたいなサーブ打つ奴いなくて助かったな...」
「...ああウチはお世辞にもレシーブ良いとは言えないからな」
「油断だめです。多分ですけど、向こうのセッター正セッターじゃないです」
「えっ!?」



影山が言う通り青城のセッターは正セッターではない。


3セット目が始まろうとした時、



体育館中に響くと甲高い女子生徒の声ーーー



奴だ.....




「やっほートビオちゃん久しぶりー!育ったねー」



及川さんが影山にウザ絡みしている。


私は見つからないようにしていたつもりだけど、スクイズを片付けようとした時、及川さんと目が合ってしまった。



ヤバい.....



「え?ちょ!岩ちゃん!!なんでしずくが烏野にいるの!?岩ちゃん知ってたの!?」
「.....」
「無視しないでよ!!」



うわぁ.....めんどくさい.....



「しずく!あとで話があるからね!!及川さん怒ってるよ!!」
「.....」
「しずくも無視!?なんなの!?」




烏野のベンチからはじめちゃんに「助けて」の視線を送ると「がんばれ」って口パクで返してくれた。







大王様降臨
(榎崎、あいつと知り合いなのか?)(一応幼馴染みです)







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