30.少し本音を零す
足痛い.....


足痺れて動く度、身体全体に電気が走る。


沖田さんと一緒に屯所に戻ったあと、こっぴどく土方さんに怒られた。5時間も。


迷子になったあげく、ケータイの充電が無くなり連絡出来なかったが、攘夷浪士、高杉に襲われたという理由で今回約2日も屯所を空けていたことに関してお咎めもなかった。



お咎めは無かったがこっぴどく怒られた。大事なことなので2回言いました。


まぁ、その時に私が住み込み女中になった際不審に思っている隊士は僅からずにいたことを聞いた。土方さんも最初は疑っていたと。


別に変なことでもないし、疑われて仕方ないことは知っていたので、あまり驚くことは無かった。


今回、無断で2日空けていたことに対し不審に思っている隊士が騒ぎ立てたことも知った。その事に関して、近藤さんが朝礼時説明済みにて、私が戻ってきた際、大事にはならかったと。



ありがとうゴリ父さん....



あれ?ゴリ父さんって聞こえたよ!?っていう声があったが、私は額を畳につけ、お礼をいい、説教部屋から出ていった。


2日間屯所を空けていたが、怪我を考慮して仕事は休みになった。有難いことです。



私は自室に戻り、襖を空け部屋に陽をいれる。私はそのまま日向ぼっこをしながら昼寝することに決めた。ろくに寝ることが出来なかった私は1分経たずに夢の世界に飛び立った。






ーーーーーーーー
ーーーーー




ここは夢?
見た事のある庭...屯所?いや、屯所よりも見慣れた光景。あ、あの木は私の実家にあった桜の木。でも、どうして誰もいないの?



お母さんもおじいちゃんもいない.....みんなどこに行ったの?



夢の中の私は家族を探してさ迷っている。


探し回ってやっとたどり着いたのは、私の実家に隣接されている剣術道場。きっとそこにお母さんもおじいちゃんともいる。けど、行くことが出来ない。足が前に出ない。



剣術道場から鉄の匂いがする。鉄じゃない血の匂い。この前高杉の船の甲板で私が斬った人から溢れ出した血の匂い。むせ返るような匂い。



身体は正直で、震えていて中々足が前に出ない。でも好奇心のほうが勝って私は道場の扉を開ける。




そこに広がっていたのは、真っ赤に染まった稽古場.....、町の人なのかわからない屍が無数に転がっている。私の足元には肉片になったさっきまで人間だった何か。



夢なのに変にリアルだ。
夢の中の、私は肩で息をしてうまく呼吸が出来ない。ぱっと見、お母さんもおじいちゃんもいない。きっと逃げたんだ..



人の気配がした。


足元から顔を上げた。
目の前にいたのは、お母さんでもおじいちゃんでもなく...私が嫌いで、大っ嫌いな...





「っ!!」



目が合う前に私は夢の世界から帰ってきた。



「.....嫌な夢...」



私は胸元の服を力いっぱい握り、呼吸を整える。呼吸を整えながら頬に冷たいものがつたう。


怖い夢をみて泣いてるだなんて子供みたい...。


ふと周りを見渡すと、明るかった空は太陽は隠れ、暗闇が大きく世界を包こもうとしている頃だった。



昼寝のつもりだったのに結構寝てたみたい。



夕飯の準備くらい手伝おうかなと思い、立ち上がろうとしたと私の身体から見た事のある黒い隊服が落ちた。誰か掛けてくれたのかな?



拾い上げた瞬間に広がる柔軟剤の匂い。



「あ、この匂い沖田さんだ」



柔軟剤以外に香ってきたのは、今日迎えにきてくれた沖田さんと思われる匂い。今日近くにいたから余計に分かってしまう。変態か、私!



でもこの匂い、落ち着くんだよな...



というかいつ掛けてくれたんだろ




「起きやしたかィ?」

「...っ!沖田さん!」



隊服を抱き締めているときに突然現れた沖田さん。え、なんでこのタイミング!?



「まぁ、座れ」

「失礼しますら、あと、隊服ありがとうございました」

「...ん」




沖田さんの隣に腰を下ろす。



「なんの夢見てた」

「え?」

「魘されてた」



魘されてたの知ってるならその時点で起こして欲しかった。



「どんな夢見てたんでィ」

「それ話したら私の質問に答えてくれますか?」

「内容による」




内容によるかぁ...





「私の実家で沢山人が死んでました。きっと町の人。すごい血生臭くて、夢なのにそれがすごいリアルで...。私、母親と祖父の3人暮らしだったんです。2人とも実家にいるはずがいなくて、ずっとその中で2人を探してました。ある場所で人の気配がして中を覗くと、私の大っ嫌いな人が立っていました。血だらけで。そこで目が覚めました」

「俺たちも人を斬ってる。人斬り集団でさァ」

「.....」

「お前が夢で見た光景は嫌という程見てる。もう見慣れやしたが」




自傷気味にいう沖田さん。



「沖田さんたちがいくら人を殺してようが私は、怖くないですよ。ここにきて数ヶ月ですけど、ここの人達顔は怖いけど根は優しいことは知ってます」

「...なんでィ、それ」



沖田さんは少し笑ってくれた。


「まぁ、誰だって初めて人が死んでる光景見りゃ魘されるだろうな。ま、お前はそれだけじゃねぇーだろ。大っ嫌いな人が原因だろ...誰でィ」

「ごめんなさい。それだけはどうしても言いたくない」




口に出してしまったらあの夢を、あの時の出来事を思い出してしまう。



「はぁ...まぁ無理にとは言わねぇ。話ぐらい聞いてありゃ」

「...ありがとうございます」



沖田さんは本当に口は悪いけど優しい。不器用なだけ...。最近は驚くぐらい優しい。この間までめっちゃパシられてたし、土方さんを虐めるのを手伝わされてたぐらいだし、あれ?これ私、沖田さんの手下じゃん。暫くしたらこの間迎えにきたろとか行ってずっとパシられるのでは??




「で、俺に聞きたいことはなんでィ」

「あ!そうでした!」

「忘れてたのかよ」

「実は...」



なんて笑うと可愛くねぇと言って頭を叩かれた。酷い。



「沖田さんは、疑わなかったんですか?私の事。連絡もつかない、帰ってこない女中。終いには高杉にキスマークつけられて私を」



その質問をしたとき沖田さんの大きな目が更に開かれた。



「最初は疑いましたぜ。お前が近藤さんに電話したあと、旦那から電話がありましてねェ。アイツは万事屋の依頼に巻き込まれたって...旦那には借りもありますし、何より近藤さんがお前のこと一切疑ってなかったんでさァ」



そうか、だからさっきも近藤さん優しい目で私の事見てたんだ。




「まぁ、様子観察ってなってますぜ。さっき聞かされたかは知らねぇけど」

「.....」

「こんな顔に出やすい女が密偵なんて無理でィ」

「いたっ!」



シリアスモードになっていたところに沖田さんが力いっぱい私の鼻を摘む。



「痛くしてんでィ...お!その顔良いじゃねぇか!」

「...なに、楽し...んで...」




鼻摘むのをやめた沖田さんは心底楽しそうに笑ってる。久しぶりにこの顔見たかも...ドS沖田。



「おめぇはボケっとして守られてればいいんでィ。アホなる」

「私だって守りたいモノがある時は強いんですからね!バカ沖田!」

「言うようになったじゃねーか」

「やーめーろー!!」




沖田さんは私を叩きながら、お前はそうやって笑っとけと私の目を見て言った。




少し本音を零す
(沖田って呼んでいいですか?)(もう呼んでるだろィ)







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