ここ連日江戸の町は数十年に1度の猛暑だのなんだのと連日ニュースでやっている。
どちらかと言えば私は、暑いと地方のほうの育ち故に違う世界の夏でも大丈夫だと思っていた。
けど、現実はそんなに甘くはなかった。
茹だるような暑さがどうも続くと私はバテるようだ。こっちに来てからといい、ちゃんとした運動は女中の仕事でしかやっていない。あれだけ走り込みした体は、運動をしなくなると一気に怠けてしまい、とうとう筋肉までなくなり、脂肪の塊になりそうである。
「それでも暑いんじゃ!!!!」
「黙れ」
「黙れって酷くないですか?沖田さん暑くないんですか?そんな格好して。見てて暑苦しんですよ。どっか行けよ。それか涼しい格好してくれません??」
「お前誰にそんな口聞いてんでィ」
なぜ隣にこの男がいるのだ。
冒頭で話したとおり、ここ江戸は連日の暑さだ。
それは日中だけではなく夜もその暑さは続く。所謂、熱帯夜。
暑苦しくて目が覚めた私は、台所に冷やして置いたキンキンに冷えたコーラで体を冷やそうと縁側に腰下ろしてゆっくりしていたら、夜の巡回終わりなのか丁度沖田さんが帰ってきたのだ。
はやく、汗だらけの隊服を脱いでお風呂に入って寝ればいいものの、沖田さんは私の隣に座り、ボーッとしていた。
先日の土方さんといい、今日の沖田さんといい、みんな暑さにやられたのだろう。
「おい」
「はい?」
「オメェよ、なんか隠してるだろ」
たまにこうやって沖田さんは私と二人っきりになると今のような質問というか尋問をしてくる。
隠し事とは一体何のことだろうか。
私が隠してることといえば剣道をしていたということだけだ。
「なにも隠してませんよ」
「···ふーん」
私はこの時間が好きじゃない。只でさえ暑くて気が狂いそうなのに、この沈黙。
沖田さんの瞳はとても苦手だ。たまに視線を感じてみる瞳は疑いも信頼も色々混じってるように見える。
あとこの人ポーカーフェイスすぎて、怖い。
「はー、沖田さん汗臭い」
余りにも沈黙が長すぎて私がこの沈黙を破った。
「誰が汗臭いんでィ」
「···っ」
何を血迷ったんだこの人…
なんで私の上に跨がってるの?
なんで隊服脱いでんの?
あ、暑いもんね···じゃない。
スカーフ…スカーフ外すな···エロい!
「オメェのほうが汗くさいだろ···」
「ちょ!」
首もとに顔近づけるな、アホ沖田!
「···ん」
沖田さんの吐息が首筋にあたり、今までに聞いたことない変な声が漏れた。
「···なるじゃダメだな···。萎えるわ」
「は?」
は?まじでなんなの沖田さん。萎えるってなに!?
それって失礼だよね!?
ムカつく、コーラ一気飲みしてやる···あ、ない。
「私のコーラ返せドSバカ!!!!!」
暑いと幻見るとか言うよね?
(あいつなんて声出すんでィ···)