11.夏祭りの定番はやっぱかき氷
「近藤さん、もう肩の傷はいいんですか?」


「あぁ!!慣れっこだ!」


「いやいや、慣れたら困りますよ」



何週間か前というかいつだったか忘れたけど、幕府の重鎮のガマを守るために近藤さんが撃たれたらしい。「ガマの分際で偉そうにしやがって」と隊士のみなさんが口々に言っていた。でも近藤さんが無事でなにより。



「なるちゃんも今夜行くかい?」


「今夜?」


「そう!今日は祭りだ!」



祭り!?え、行きたい!


そういえば沖田さんが「祭りなのに護衛とかだりィや、サボりてー」とか言ってたな。まじ、警察のクセにそんなこという?普通。いや、沖田さんだから言うのか。納得。



「行きたいでーす」


「俺らは将軍の警護があるから友達と行っておいでよ。女中の美咲ちゃんとかさ」


「ちょい、きいてきまーす!」







「美咲ー」


「あ、なるちゃんどうしたの?」


「今日、祭りらしいんだけど、一緒にまわらない?」


「あー、ごめんね。その祭り彼氏といく予定なんだ」



彼氏···そうだよね、こんな美人、世の中の男どもがほっとくわけないよね。


というかその彼氏よくここで働くこと許したな。



あ、山崎さんとかその他もろもろの隊士のみなさん、ドンマイ。


「そうなんだ···大丈夫!!他当たるね!彼氏さんとよろしくです」



美咲彼氏と行くのかー。誰か、一緒にまわって···あ!いい人たちいるじゃん!


「万事屋さーん!!」



あれ、いないのかな?



「神楽ー!新八くーん!銀ちゃーん!」



うんともすんとも言わない。
物音すらないよ。
いないのかな?


「誰だい?」


「あの万事屋さんに用事があってきたんですけど」


「あぁ、あいつらかい。今、川沿いを歩けば変なカラクリ弄ってるだろうから行ってみな。すぐ見つかるよ」



なんか顔が怖いおばぁちゃん?にそう言われ、川沿いを歩く。



近藤さんが銀ちゃんに負けたところに見慣れた3つの頭とたくさんのカラクリ。




「神楽ー!」


「なるアル!」


お目当ての人物を発見したので、下まで降りると神楽はドロドロのままごとをしていた。リアルおままごとかな?ネネちゃんじゃん。



「どーしたアルか?」


「今日祭りじゃん。一緒にどうかなーって」


「この仕事が終わったらいけるんじゃねぇか」


「なに言ってんすか。終わるか微妙らしいですよ」


なんだ、仕事中なのか。一人でまわるか。



「祭りが始まる頃にまたここに来な。終わってたら神楽と祭りに行ってやれ。そして俺にわたがし奢れ」


「自分の頭にあるわたがしでも食ってろ」



銀ちゃん、この前から年下の私に現金を求めすぎ。給料一応貰ってるけど少ないから。祭りはなんとか神楽とまわれるだろうからひと安心。一人でまわるとか沖田さんあたりにバカにされるわ。





真選組に戻ったら近藤さんに万事屋と祭りに行くと伝えといた。それと、土方さんと沖田さんには万事屋と一緒に祭りにいくというのは内緒にしといた。行くとなれば絶対うるさいもん、とくに土方さん。





ーーーーーーーーーーー
ーーーー





「なる終わったヨ!祭り行くネ!」


「行こ行こー!」



祭り会場に行くと、そこにはたくさんの人で賑わっていた。祭りってやっぱり夏の風物詩のひとつだし楽しいもんね。でもカップル多くてイライラするわ。目の前でイチャイチャすんなや。




「カップル多くてムカつかんだけど」


「なるには到底無理な話アル」


「どういうことそれ!?」


ひどいよね、神楽。これから出来るかもしれないのに。あ、焼き鳥食べたい。


「あ、おじちゃんだ」

「げっ!!激辛チャイナ娘!」

「誰?」

「マダオアル」


マダオ···新たなあだ名?



パン



「よこせよグラサン」



神楽は射的を始めていて、マダオって言われる人のグラサンを狙っていた。


てからそれ景品じゃなくない?
それもグラサンのレンズ割れたよ。



パン




「腕時計ゲーッツ」



聞き慣れた、少しクセのある喋り方




「ゲッ、沖田さん」

「ゲッとはなんでィ。ムカついたから俺にかき氷買ってこいよ、町人B」

「自分でいけよ」



沖田さん···あんた将軍の護衛はどうした。この人仮にも警察なのにすごい祭り楽しんでるんですけど!!



沖田さんは神楽と射的勝負を始めていた。何故か狙うのは全部マダオさんのものばっか。




「あの二人、花見のときからあんな感じだね」

「なんかライバル視でもしてるんですかね?」



新八くんとその勝負をみてたのだけど、飽きた。もっといいもん狙えよって思ったけどさ、あの二人はマダオさんのものをただ単に打ち当てたいだけな気がする。



「新八くん、私かき氷買ってくるわ」


「町人B、俺ァブルーハワイで」


「私はいちごがいいアル」


「じゃあ僕は「買わねぇーぞ」


「最後まで言わせろよォオオオオ!!」




四人分のかき氷どうやって運ぶんだよ。変なもの狙ってないで自分で買いにいけよ。




「おじさーん!いちご1つください!練乳多めで」


「はいよ!」



やっぱかき氷はいちごに練乳だよね。定番が一番だわ。



神楽は沖田さんと競い争ってるから暇なんだよねー。近藤さんたちのところに行こうかなー。生の将軍様見てみたいしな。



あ、花火綺麗。



花火に心を奪われかけそうになった時だった。明らかに花火が上がる音とは違う音。これって爆発音?



たくさんの人たちが将軍様がいる櫓の方から逆方向に逃げてくる。



やべ、私も逃げよ。一般市民の私は大人しく逃げないと、この間みたいに巻き込まれる。



かき氷を溢さないようにゆっくり逃げていると見慣れた銀髪が目に入った。



「銀ちゃん、なに突っ立ってるの?」


「ちょ、なるちゃん逃げなさい!!」


「え?お母さん?というか今逃げてるんだけど…」



銀ちゃんに隠れて見えなかったけど、よく見ると銀ちゃんの後ろに人がいた。



目が合う。




なんだろ···息が詰まる。冷や汗がゆっくりと流れる感じが皮膚を通してわかる。



沖田さんとは違う恐怖感。あの顔、どこかでみたことある。



「高杉···晋助···」


「ほォ···銀時このちんちくりん俺のこと知ってるみたいだな。お前の女か?」


「高杉···冗談キツいぜ。あんな貧相なガキんちょお断りだ」


「おい!」


ここでも貶されるの、私!?



「まぁいい」


銀ちゃんと高杉がなにやら話している。


逃げ惑う人々の声で全然聞こえない。だいたいさ、私を貶される時の声のほうが大きいっていじめですか、コノヤロー!そういうの多いよね、最近!



銀ちゃんと高杉をみる。


多分、銀ちゃんの血が地面に染みを作る。どこか刺されたのだろうか?見てるこっちが痛そうなんだけど。




「ただし黒くねぇ、白い奴でな。え?名前?定春ってんだ!」



そう言って高杉を殴りにかかる銀ちゃん。定春って神楽が飼ってる犬じゃん。なんの話してたんだ、本当に。我が家のペット自慢?



銀ちゃんの拳を華麗に避けた高杉は、私の方へ刀を抜いたまま走ってくる。



"殺される"



その4文字が頭を過った。




「おい高杉よォ···この貧相なお嬢ちゃん傷つけたら厄介な奴らに殺されるぜ」

「それが銀時···お前のことか?」

「俺じゃねぇ!!ゴリラだァアア!!」



高杉が私目掛けて振りかざした刀を銀ちゃんが愛刀の木刀で受け止める。


緊迫した空気だった。



「···フッ、まぁいい···銀時お前を殺すのは俺だ。そしてそこにいるちんちくりんも俺が殺してやる」

「はぁ!?無関係!!」



高杉は堂々と私を殺す発言をして消えていった。



「お前変なのに目をつけられたな」

「銀ちゃんのせいだよね。でも、助けてくれてありがとう。わたがし1本ぐらい奢ってあげるよ」


「そりゃありがてぇ。けど、まだあっちの騒ぎは終わってねぇから行くぞ」


「うん」




銀ちゃんってやっぱ漫画の主人公なだけあるな。助けられたときら、あのムカつく銀髪がかっこよく見えたもん。



銀ちゃんが向かった所には、真選組のみんなも戦っていた。


あのカラクリってたしか、銀ちゃんたちが昼間手伝ってた人のだ。その人が騒ぎを起こしたんだ。


銀ちゃんが平賀さんの"三郎"と呼ばれるカラクリを切る。


あのカラクリ、銀ちゃんを攻撃できたのににしなかった。カラクリにも人の心は移るのかなって思った。



···それってホラーじゃん。



「なるさん、無事だったんですね」


「銀ちゃんに助けて貰った。これで一件落着かな」


「多分だと思いますよ。一応親玉仕留めたようかものですし」


「そっか。なら私は真選組のところに戻るね。またね!新八くん」


「気を付けてくださいね」


「ちょ!なるちゃぁーん!!銀さんにわたがしはー?」


「そんな約束してなーい!」



後ろのほうで「このアバズレー!」とか言ってる銀ちゃんの声が聞こえるけど、無視。



あー、高杉のせいでかき氷溶けたよ。地味にショックなんだけど。



練乳のところをあとから食べるのが好きだったのに。このかき氷もうだめだよ。



「町人B、テロリストと戦った俺にかき氷はねぇんですかィ」


「あの騒ぎで買えると思ってんですか?」



私の持ってるかき氷用の容器をみて、少し汗を拭いながら言う沖田さん。  



「じゃあそれ貰いまさァ」


「あ!溶けてるから美味しくないですよ!」


「冷たければなんでもいいんでィ」



結構な量があるはずなのに、溶けきったかき氷を飲み干す勢いで飲む沖田さん。あれ、逆に喉乾くよ。



「ありがとうございやした。ほれ最後の一口」


「あ、ありがとうございます?」



絶対くれないだろうと思ってたけど、本当に一口分くらい残してた沖田さん。



あんまり飲みたくないけど、飲めよオーラに勝てず飲みましたよ。



「ちょ、そこの二人!イチャつくの禁止ィイイイイ!!」



どこがイチャついてんだよ、ゴリラ···。






夏祭りの定番はやっぱかき氷
(テメェ、今までどこに行ってたんでィ)(銀ちゃんのとこ···あだっ!)



[ prev next ]
Back to top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -