6.女中の1日のお仕事
「···ねむ」


みなさんおはようございます。
ただ今、朝の5時です。昨日土方さんから渡された女中の仕事内容を寝る前に見たときは地獄だと思った。


なんでも朝食の支度は6時頃らしいんだけど、通い勤めの女中さんたちはそんなに朝早くに来ることは出来ないため、隊士たちが持ち回りでやってたらしい。そこにやってきたのが、私、潮崎なるなのです。6時に始めると朝食の時間に間に合わないから5時からやれと言われて、今の時間になります。


完璧イジメだよね、と思ったのは内緒にしておこう。


朝食の時間はだいたい7時半かららしい。通いの女中さんは7時前にきてご飯を作るからスゴいと思った。



そのことは置いといて、なぜ私がここまで眠いかというと、単に早起きだけじゃなくて···。


隣の部屋の主のせいなのですよ。



11時頃には寝ようとしていたのだが、隣の部屋から襖を蹴る音が聞こえるのだ。


沖田さん···。


お願いだから寝させてくれと思って2時間ほど、やっと音はおさまった。


よし寝れると程よい眠気が来た頃にまた蹴る音···。


まじ暇人かよ!


と何度も同じことが繰り返されてちゃんと寝れたのが2時を過ぎていたと思う。


そのおかげで寝不足なのだ。



台所に行くと、ジャガイモと人参、玉ねぎが大量にあった。


カレーか。


朝カレーいいよねと思いながらジャガイモの皮剥きから始めた。



材料をやっと切り終わるという頃に台所に一人の人間がやってきた。


「潮崎」


「あ、土方さんおはようございまーす」


「おう」


「どーしたんですか?」


「総悟のやつ、起こしてきてくれねぇか?」


「沖田さん?」


「あぁ頼む」



土方さんは私の返事を聞かずに出ていった。


誰も二つ返事してないんですけど···



はぁ沖田さんを起こすのか···こわっ!
だってさ、ドSだよ。なんかされそうだわ··/それも寝起きとか絶対低血圧で機嫌悪いよ。



「沖田さーん」



沖田さんの部屋の前で声をかけてみるが応答なし。



「おっきー!沖田総悟さぁああん!!おーい!!起きろ!!」


襖を少し開け、大きな声で呼んでみる。これまた応答なし。



叩き起こしたら沖田さんに殺されるし、時間かけると土方さんに怒鳴られるだろうしな··/。


仕方ないか···


「失礼しますよー」


勇気を持って襖を開けて沖田さんの部屋に入る。部屋の中心には丸い塊があってあれが沖田さんだと気付いた。



揺すってみても起きない。



布団をはがす···起きない。というか昨日初めて見たときから思ってたけど、沖田さん本当に綺麗な顔立ちしてるよなー。


男の人なのに白くてきめ細かい透き通りそうな肌、長い睫毛、そしてきっとサラサラしてるだろう髪の毛。


嫉妬するぐらい綺麗。


そういえば友達が言ってたな、"沖田総悟っていうキャラはね、可愛い顔してドSなの"って···あ、ドSは関係ないか。でもさ、なんで私、沖田さんのこと優男だと思ったんだろう···謎。



と、沖田さんの寝顔を見ながら物思いに耽っていると、突然、沖田さんの目が開き、素早い動きで目潰しされた。


間一髪で避けたけども!



「···ッチ」


「舌打ち!私じゃなかったら失明ですよ!!失明!!」



この人本当に今まで寝てました?絶対起きてたよね、あの動き。



「なんでオメェが起こしに来るんでィ」


「土方さんに頼まれて」


「土方の野郎逃げやがったな」


「え?」


「なんでもねぇや。じゃあ俺はまた寝るんでそう伝えてくだせェ」



おい、怒られるだろうがって思った矢先、事の発端を作った人がこれでもかというぐらいの足音を起てながらやってきた。


「総悟ォォオオ!今日会議っていたっだろうが!!」



最初から土方さんが起こしに来ればいいのに···。



「潮崎起こせだて言っただろうが!!」


「いや起こしたけど、また寝ようとしたんですもん!!というか土方さんが最初から起こしに来ればよかったんでしょうが!!」



まだ私仕事残ってんですけど!!
朝食の準備のあとは洗濯が待ってるんだよ!


え?ご飯作らないのかって?
私は食材刻むだけの係りらしい。メインは洗濯と買い物らしい。



「ったく、仕事戻れ」


「あいあいさー」


「その返事どうにかならない?」


「なりませんな」



頭を叩かれ私は洗濯場へ。



そこには大量の隊服が山積みされていて、色物とか分別する籠があるにも関わらず適当に置かれていた。


あと鼻をいちいち掠める臭いに私は顔を歪めた。


マスクをしても臭いが遮断されることはない。


汗と男臭、皮脂···あと1つだけ独特的な臭いが混じってる臭い···。


この独特的な臭いの正体は、きっと1つだけしっかりと分けてある服だと容易に想像がついた。


"血液付着"



これが臭いの一番の原因かもしれない。



土方さんからもらったメモを見る。



血液付着とものは
@中性洗剤で洗い流す
A水でよく洗う
B漂白剤で洗う
と···



ほうほう···そうやって洗うのか···でもやっぱ一人でこの量はキツすぎる。



洗濯機は4つほどある。どこのwash○ouseかよ···。


1つは隊士のみなさんが下着を洗うもの。なんでも女中さんの中にスゴい美人の人がいるらしくてその人に下着を洗ってもらうのが恥ずかしいらしく、自分達で下着は洗うことにしたらしい···。どんな理由だよって思ったけどさ。



その流れで隊服も洗えばいいのに···。洗濯機に放り込むだけじゃん。



「はぁ···」


1日1日を過ごせば慣れるのかな。



「あのー」


「はい」


うわぁ、美人。
この人だな、下着を自分達で洗うことにしたという噂の美人は。



「新しい女中さんですよね?私、美咲と言います。週に3回ほどこちらで女中として働かせて頂いてます」


「潮崎なるです」


「なるさんですね。美咲って呼んでください。そういえばなるさんは着物じゃなくて甚平なのですね。あ、敬語なしでいきましょ」


「甚平のほうが動きやすいから···」


「そうなのですね。私、今日洗濯係なので色々教えるね」


「ありがとう!」



通いで女中として働いている美咲。スレンダー美人という言葉に相応しい体つきな気がする。出るところはしっかり出ているって感じ。あと、どことなく私の幼馴染みに似ている気がする。ただ、名前が同じだから勝手に脳内でそう思い込んでるだけかも。



美咲は初めて会ったにも関わらず、色んなことを教えてくれた。


特に女中の仕事で嫌になるのは買い物らしい。


なんで買い物?って思ったけど美咲が後からわかるよって言っていた。気になるけど買い物の話をしてたら少し顔を青くしていたので、これ以上聞くのはやめた。



にしても今日はよく働いた。



「なるさん、またね!」


「うん、今日は色々教えてくれてありがとう!またねー!」






女中の1日のお仕事
(ちょ、なるちゃん!あの美咲ちゃんと喋ってたァ!?)(え、なに?うるさい山崎さん!!)

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