◎3.私だけの呼吸法
甘露寺さん改め、蜜璃さんのご自宅までの間、私は、ここにきた経緯を話した。でも、蜜璃さんたちが私がいた世界では漫画の中の人たちというのは伏せておいた。
蜜璃さんは、驚きながらも私の話を信用してくれたし、頑張ったって褒めてくれた。なんだか、その時心がホワホワした気持ちになった。
「ねぇ、夏葉ちゃん。私の継子にならない?」
「継子?」
「うん。弟子みたいな感じかな、継子って。さっき、夏葉ちゃんのお話の前に少し話したでしょ?」
「はい」
蜜璃さんは私を継子にならないかと誘ってくれた。継子ってなんだろうなって思ってたんだけど、弟子みたいなものらしい。
「私の流派は本当に独特的だから、夏葉ちゃん、私の呼吸法は難しいかもしれない。でも、この世界は鬼がいるし、少しの間助けても今の夏葉ちゃんならすぐに鬼に食べられちゃうと思うの」
「さっきみたいなやつにですよね...」
「うん。だからね、一緒に鬼退治しない?私が夏葉ちゃんを守るわ...」
この世界は人喰い鬼がいる。私の世界には...というか、鬼自体いない。
なにも知らない人達の命が意図も簡単に奪われる。幸せに暮らしていた人々の日常も...
私がそうだったように。
「大丈夫です。私、1度死んだ人間だと思うんです。だからきっと大丈夫です。蜜璃さんのお役にたつことをお約束します」
「夏葉ちゃん...カッコよすぎるわ...」
私は、命の恩人である蜜璃さんを殺されたくない。絶対に守るんだ。
「でもね、私と一緒に戦う為には、鬼殺隊に入らないとダメなのよ」
「鬼殺隊...」
「鬼殺隊に入るためには最終選別に合格しないといけない。それまで頑張ろうね!」
「はい!」
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鬼殺隊に入るため、私は蜜璃さんの地獄の柔軟や訓練をする日々...。
正直言って、しんどい。蜜璃さん、あんなに華奢なのに力強いもん。
基礎体力をつけながら、呼吸法の練習、刀の使い方...毎日の特訓が濃い。
特に、全集中の呼吸・常中がきつい。これが出来るようになれば飛躍的に身体能力が上がるらしいけど、ずっと全集中の呼吸をしないといけないのがツラい。頑張るしかないけど...
あと、蜜璃さんが扱う恋の呼吸が難しい。独特な流派とは聞いていたけど、これほどなの...。蜜璃さんにコツを聞いても、きゅん!ってすることを思い出して!って言われるけど、元の世界で生きた年数は16年。そんなにキュンとすることはなかった。まぁ、キュンとするようなことを想像して、使ってみるもイマイチ、ぱっとしない。
そんな日々が半年も続いた。
「私、向いてないのかもしれない...」
「うーん、あと少しなんだけどね!でも夏葉ちゃん才能あると思うわ!きっと好きな人ができたら使えるようになるかも!」
蜜璃さん楽しそう...
「蜜璃さんとお話してると元気でます!いつも柱のお仕事大変なのにありがとうございます」
「夏葉ちゃん、ほんと可愛い!夏葉ちゃん流の呼吸法見つけましょ!」
「私の呼吸法...」
恋の呼吸はなかなか出来なかったけど蜜璃さんは継子として私に色んなことを教えてくれた。
説明に擬音が多い人だけどらなんとなく伝わるし、蜜璃さんが大好きだから私は努力出来た。
更に3ヶ月が過ぎた頃、私の呼吸は突然出来るようになった。
「蜜璃さん!今ならなんか出来そう!」
「え!?」
「...ふー、雪の呼吸 壱の型 乱れ雪!」
「キャッ!」
雪っていいよなー、雪にダイブしたいってふと思った瞬間にできた呼吸法。
大粒の雪があちらこちらで舞っている。
「すごい!すごいわ!」
「...蜜璃さんのおかげです!」
自分のように喜んでくれる蜜璃さんがすごく好き。
「夏葉ちゃん、呼吸法もばっちりだし、体力もついてきたから、最終選別に行ってみましょ!」
「はい!」
「すごいね、大変なの...だから...生きて帰ってきて欲しいわ」
「あのときの約束...果たすまで私は死にません!」
蜜璃さんの役に立つ...これはずっと心の中にある私の決心。
「頑張ってきます!」
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