冬休みに入ってから3日後、明日で年が変わるという日だった。
ケータイに1つの連絡が入る。


「はい黒木です」
「黒木さん、冬休みの中申し訳ございません。本来学生はお休み頂きたいのですが...」
「人手不足なんですよね。大丈夫です。私一人で事足りる任務ですか?」
「はい」


連絡は補助監督の高瀬さん。
どうも4級または3級の呪霊が出たとのことで、私は私服から制服へ着替える。
4級か3級なら私一人でも大丈夫。


私の階級は、まだ4級だけど、夜蛾先生からは頑張れば2級ぐらいなら祓えるだろうと言われたし、五条との任務のおかげで、攻撃系の呪力コントロールもだいぶ上手くなった。それに五条と無理矢理交わされた”無茶するな”って約束は守れそう。


1人でだってできなゃ。


私は、約束の時間通りに現れた高瀬さんの車に乗り任務地へ赴く。


そこはただの静かな公園であった。
高瀬さんの話によると呪霊が現れ、小さな子どもたちにイタズラをするらしい。それが小さな怪我から大きな怪我まで負わせているらしい。だから、この公園お昼過ぎだというのに、子供ひとりいないのか。


でもそれがいい、大人の判断だよね。
目に見えないモノが原因で怪我するなんて誰も予想なんてしない。今は怪我だけど、これが死に直結する怪我になったり、もしくは最悪の場合私みたいに殺される可能性だってあるかもしれない。それだけはあってはならない。


帳を降ろしてもらい、私は呪霊が出るのを待つ。
夜のように暗くなったからすぐに現れると思ったのに、なかなか現れない。


たしか情報だと...あ、ブランコ


ブランコで遊んでいる時に特に襲われている事が多いということを思い出し、私はブランコに座り揺らす。


暫く揺らしていると、私が乗っている以外のブランコが動き出す。


視線を向けると頭が大きく足が短い呪霊と、逆に手足が長いためうまくブランコに乗れていない呪霊が2体いた。この2体が原因かな?


呪霊は私にはまだ気づいていない。
気づかれないように、私はブランコの鎖部分を脇ではさみ、両手を片方ずつ呪霊の方へ向ける。そして以前、五条との合同任務の時のように拳を握ると、結界が呪霊を囲み爆発させる。あの時よりも結界は大きいけど、あの時よりも余計な呪力は使ってないから呪力切れで倒れることはない。



「初、単独任務成功」


冬休み開けたらみんなに1人で任務報告したんだよって言お。傑は褒めてくれそう。硝子も褒めてくれるんだろうな。
五条は...「3級祓えたぐらいで...」って嫌味たっぷりで言うんだろうな。すごく想像つく。


私はその場にいないクラスメイトの事を思い出し1人で小さく笑った。


帳があがると高瀬さんはおらず電話をかける。


「高瀬さんお疲れ様です、黒木です。終わりました」
「お疲れ様です。さすが五条くんと任務行ってるだけありますね。あと30分ほど待って貰えますか?他の方を回収してからそちらへ向かいますので」


30分か...
うーん、どうしよ


「これから少し買い物しようかなって思うので、今日は1人で帰ります」
「わかりました。気をつけて帰ってきてくださいね。最近、補助監督を名乗る不審な車がいるみたいなので」
「了解です!」



私は任務地から1番近い渋谷へ行こうと駅へ向かう時、ケータイが鳴る。


「もしもし」
「なに、お前外にいんの?」
「そー。ねぇ、五条きいて。私今さっきね、1人で任務こなせたよ」
「はぁ?お前まだ4級だろうが。単独任務はねぇはずだろ?」
「人手不足らしい。でも悪くて3級相手だったから」
「クソ雑魚じゃねぇか」


うーん、やっぱ大体思ってたことと同じこと言うな、五条。


「で、お前なにしてんの?」
「今から渋谷いこうかなって」
「俺も行こうかな」
「え、来るの?久しぶりに会いたい」
「...っ」
「五条?」
「なんでもねぇ「悟様!どなたとお話してらっしゃるのですか?」、お前には関係ねぇだろ」



五条の声を遮って聞こえてきたのは、凛としている女の人の声。


お見合い相手?


モヤっとする違和感が私を襲う。なにコレ...。



「五条?」
「沙菜今日やっぱ渋谷行けねぇ」
「...そっか」
「夜、電話する」
「...ありがとう」
「俺のゲームに付き合えよ」
「それって、徹夜?」
「そー」


私絶対途中で寝る。


「また電話する」
「はーい」


少しモヤっとしたけど、電話してくれるっていうならすごい嬉しい。


私は落ち込んでいた心が少し軽くなった早く渋谷にいって買い物済ませよと足を早く動かす。


周りに誰もいないところで私の隣に黒の車が止まる。



「黒木さんですか?」
「そうですけど」


あれ、この人見たことないな。誰だろ...でも黒のスーツ着てるし私の名字も知ってるから新しい補助監督の人かな?


「任務終わりお疲れのところ申し訳ございません。もう1件緊急でお願いしたい任務がありまして...。高瀬の代わりに私が赴きました」
「なるほど...」


年末も忙しい時は忙しいんだな。ほんと人手不足過ぎでしょ。


私は車の中で、任務の詳細を聞くべく後頭部座席へ乗り込もうとしたとき


「...った!」


乗り込んだ際、頭を鈍器で殴られた。
痛い、頭がズキズキする。



結構な衝撃だった。私は後頭部座席に倒れ込むときにみたのは運転席と助手席から私を見てニヤッと笑う、スキンヘッドの人と小太りの男の人だった。


あー、これ高瀬さんが言ってた補助監督なりすましの人達じゃん。なんで気づかないの、私のバカ。




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