季節はそろそろ冬へと足を踏み入れる頃、鳴るはずのないスマホが突然鳴り出した。


今日は日曜。五条も家の用事で任務がないため、必然的に私も休みなわけで、二度寝から起き洗濯物でもしようとした時であった。


今までスマホは電波が届かないアイコンが表示されていた。でもこっちにきて半年が過ぎたのにも関わらず充電はほぼ満タンの状態。不思議だけど使えないからいいっかと考えることをやめていた矢先の着信。


その着信はニュースを知らせるもので、突然鳴ったから興味半分で確認したのである。



「え...っ」



私はニュースを確認したのち、スマホをベッドへ放り投げ部屋から出た。
靴なんて履く余裕も上着を着る余裕もなくただただ、その場に居たくなくて、寮を飛び出した。



ヤダヤダ...


分かってはいた...分かってはいたんだ...


でもなんで今になって...



「...った」


私は走っていたのに突然見えない壁にぶつかったかのように何かあった。正確にいえば術式。


「お前、こんな寒いのになんで薄着なわけ?ってかなんで靴も履いてねぇんだよ」


聞こえてきたのは、多分帰るのは夕方か日付が変わる頃かもと愚痴を零していた、五条悟。


「おい、聞いてんのか?」


五条は大きい図体をくの字に曲げ、下から私の顔を覗き込んでくる。


「なにお前、泣いてんの?」
「泣いてない...」


五条に指摘されやっと気づいた。私の頬には涙が伝っていて、指摘されたことによって涙の量は更に増える。


「沙菜?」


なんで、なんで私が...


「なんで...、もうやだっ...」


吐き捨てるように言った言葉を遮るように五条が術式を解いて私を抱きしめる。


「ご、じょ...くる、しい」
「うるせぇ...」


今の私に優しくしないで欲しい。
こんなに優しくされたら五条に縋ってしまいそうで、それが怖くて...情けなくて、でも今の心理状態だと今まで考えないようにしていたことがどんどん溢れてきて自分が嫌になる。




○○高校に通っていた黒木沙菜さんの遺体は発見されず、両親は捜索取りやめを申請



さっきみたニュースは、あの時私が完全に死んだことを示唆するものだった。


私は五条に抱き締められながら、五条の胸だ今まで我慢していた分、泣き喚いたのであった。







ーーーーーーー



「ほら...」
「あ、ありがとう」


あのあと泣き疲れて、眠たいと言った私を五条は何故か私の部屋ではなく五条の部屋に連れて行かれた。何故...。その五条は薄着だった私に適当にその場にあったパーカーを投げつけとりあえず着てろといい、足も洗えといって風呂場に連れていかれた。


さっきからいつもの五条じゃない気がして、頭どっかにぶつけたのかなって思ってしまう。だって、私がお風呂から出てきた時にホットミルクまで渡してくれるのだから


「どこにもぶつけてねぇよ」
「...」


また声に出てた。


適当に座った私の横に五条もドカッと座る。
さっきまで盛大に泣いてしまったからまともに五条の顔が見れない。


「で、なんで泣いてた?」
「え...追求してこないかと思ってた」
「いや、あんだけ泣き喚いただろ、教えろよ」


前言撤回。
やっぱりいつも性格悪い五条だ。


「言いたくない...」
「あぁ?」


その言い返し、ほんとやめた方がいい。
怒ってないのはこの数ヶ月任務に行くのがセットだから分かってきたけど、心臓に悪い。


「沙菜」
「...っ」



名前を呼ばれ五条の方を見ればあと数センチで額が付きそうな距離に思わず息を飲む。


五条は自分の顔がいい事を知っていてこういうことをするからタチが悪い。性格悪いけどイケメンだし、正直カッコイイと私は思ってるから、こんなに近いと男性経験がない私は顔が赤くなってしまう。


案の定、五条は私の顔をみてニヤニヤしている。そして隣にいることをいい事に私の肩を触り私の身体を自分の方へ向け、そのまま自分の方へ引き寄せる。そしてさっきよりも顔を近づけ耳元で


「何顔真っ赤にしてんの沙菜」
「...っぁ」


揶揄うようにじゃなくて少し真剣にそしていつもより低めの声で言われ、またその時にかかる息に思わず変な声が出てしまい、思わず口を手で抑える。


五条は五条で私の変な声を聞いて肩を押して私との距離をとる。部屋にいるからかサングラスはしておらず、その綺麗な蒼眼は見開いている。


「へぇー、お前耳弱いんだ」


といい肩に置いていた手を耳に持っていき触れるか触れないかぐらいの手つきで指を動かす。


「...っん、や、ご、..じょ」


こいつ楽しんでやがる!


涙が引いたのに、今絶対涙目。でも私はその目で五条を睨む。


「悟...帰ってきた...なら...」


五条にいい加減にしてと言おうとしたら五条の部屋のドアが開き傑が顔を出した。


「お邪魔したね。悟、私が隣にいること忘れないでくれよ」
「おー」


え、傑助けてくれないの?


傑がドアを閉め立ち去ったあと、五条は私の耳を触るのをやめ頭に手を置いた。


「お前が今、話したくないのは分かった。でもなんかあるはら俺じゃなくてもいい。傑でも硝子にでも話せ」
「う、うん」
「ま、俺に1番に言わねぇと許さねぇけどな」


え、俺じゃなくてもって言ったじゃん。


「今日はゆっくり寝ろ。明日俺との任務な」
「いや、いっつも五条となんだけど」


五条は笑って私が着ているパーカーあげるわって言い、私はそれに関しありがとうと言い五条の部屋を後にした。




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