2.顔色でわかるようになれ
私が治さんのことを宮くんと呼ぶようになってから1日。
HRが始まるまで机と恋人になろうと顔を近づけた時だった。前の席から視線を感じた。
「なに···」
「お前のせいやぞ」
「え?何が?北さんに怒られたの私のせいにしないでよね!」
「ちゃうわ!」
じゃあ何が私のせいなのだ。
理由を言え、理由を···。
「···はぁ、銀島くん!」
「なんや」
「侑がいつにも増して変なんだけど。仕舞いにはよく分からんけど私のせいって」
「侑、宮崎さんなんかしたんか?言わんと分からんで」
侑と同じバレー部の銀島くんに助けを求めるも銀島くんも侑が怒っている理由はわからないみたいで、でもちゃんと、説明するよう言ってくれている。さすがです。
「···サムのことや」
「宮くん?」
我ながら今までずっと治さんと呼んでいたのにあたかもずっと宮くんと呼んでいたかのように言えることに関心していると
「そうや!穂花が突然サムのこと、宮くんとか呼ぶのがいけんねん!!」
「いや、人の勝手やん」
「はぁあ!?」
こっちがはぁ?だわ。
1年別のクラスだけど侑に会う度に声かけてくれるから嫌われてはいないだろうなって思ってたけど、昨日、嫌って言われたんぞ!
憧れが強い人に嫌って言われるのは心底無理。
「あの後部活でクソ機嫌悪かってん、アイツ。それも俺にだけやぞ!完璧お前のせいや!サムの事も治って言えや!」
「む、むり!!」
治さんって呼ぶだけでも勇気一旦だよ!
それを呼び捨てだなんて難易度高すぎでしょ!!
「ツム···」
で、デジャブ···
昨日と同じような展開じゃない??また横から宮くんの声が聞こえる···。
「なんやねん」
「英語の辞典かせ」
「それが人に頼む態度か···あ!スマン!」
宮くんは一限にあるだろう英語のときに使う辞典を侑に借りにきたようで。こういうときって双子便利だなーって昨日全ての教科書を置き勉していただろう、侑はロッカーの中を漁りに行った。
そのとき、ムカつく顔をしていたのを私は見逃さない···。
「すまんっ!サム忘れてもうた!やから、」
侑は私を見る
こいつ、まさか···
「穂花に借りてや」
「え···」
「いや、悪いやん」
さっき悪い顔してたのはこれか!
私がどうすればいいか焦っていたら宮くんは、ええよ、仲良うない人に貸したくはないもんなといって教室をでて言ってしまった。
違うのに···
仲良くなってるつもりではいたけど、昨日のことを考えると逆に私の方が嫌われてると思うじゃん。
「持ってるならはよ貸しに行けや。今日も機嫌悪なる···」
それはやだ。
真剣にバレーやってるのにこんなことでイライラして欲しくない。稲荷崎のバレー結構好きなのに···。
「ちょっと行ってくる」
考える時間は一瞬だった。
私はロッカーに仕舞っている英語の辞典を持って宮くんのあとを追う。
隣のクラスだから教室に入っていると気まずいけどそんなこと言ってる場合じゃない。
教室を出ると宮くんは教室にはおらず、廊下の窓際に背を預けてスマホを弄っている。
「み、···お、おしゃむ···!」
「···は」
宮くんって呼んでから機嫌悪いなら名前呼ぶしかない!と思って治って呼ぼうとしたらおしゃむと噛んでしまった。
穴が入ったら、今すぐ入りたい···
「あの、私、辞典持ってるからどうぞ!あとで返してくれれば!じゃっ!」
半ば押しつけのように辞典を渡して教室に戻ろうとしたら、治さんに手を掴まれた。
「ありがとうな、穂花」
「え···ってか顔、あかっ。照れてるん?」
「うっさいねん···」
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