1.これは好きなのか憧れか
高校2年生。春···
新しい1年のスタート。
新しいクラスには憧れのあの人は居るのだろうか。
私宮崎穂花は、少しの期待と不安を心に抱きながら2年生と書かれたボードを精一杯背伸びし自分と憧れの人の名前を探す。
あっ!
あった·····
「いや!なんでお前なんだ!宮侑!!」
「素直に言えや。俺がまた前の席で嬉しいって言えや」
「嫌です。片割れと交代してきて」
「んなアホなことできるか」
私の憧れの人の名字は"宮"
そして私の名字は宮崎。
クラス表も名前順で記載されていたので、宮という名字を見つけた時の私の喜びは半端なかった。宮の後ろにつく、侑という字を見るまでは。そして、最初は必ず名簿順で席が決まっており、宮侑は私の前の席。実はこれは去年の入学式でも同じ光景である。
神様、私なにかしましたか??
「なんや、サムと同じ顔やろ俺も」
「同じ顔でも治さんの方がいい」
「さん付けってお前正気か」
「なにが」
「サムにさんなんかいらんやろ」
何言ってんの、治さんは治さん。
あの人は私の憧れの人だ。
「人でなしと言われてる侑は絶対言われないもんね」
「なんやとこのぺちゃぱい!」
「ぺ、ぺちゃぱいではありません!!」
こいつと喋ってるとホント疲れる。1年のときもだいぶ疲れたが本当に疲れる。なんや、こいつ。
「ツム」
目の前で喋っている金髪の侑と同じ顔の造りをし、銀髪で少し侑より低い声の私の憧れの人、宮治さんがHRが始まる私たちのクラスにやってきた。
んんっ、眼福!
「なんや」
治さんは侑に今日の部活の連絡事項を自分のクラスに戻る前に伝えに来たらしい。
目の前で繰り広げられる顔面偏差値の高い人達の会話を机に顔をくっつけながらひっそりと聞く。
別に侑の声が煩いというわけではないが、いや、たまに、煩いが···それとは対象的に少し落ち着いてる感じで喋る治くんの声色が身体の芯に響いてすごい落ち着いてる時だった。
「なんや、ツム···また宮崎さんと同じクラスなん?」
ん!?
え、顔見てないよね?
私ってわかったの!?
「せやで!ええやろ!」
「···いや」
いやってなに??
嫌?ってこと??
まって、2年なってすぐこんな地獄みたいなことある??治さんと別のクラスやし、ええやろっていう侑に対して少し考えながらいやってなに??
私嫌われてんの??
確かに1年の頃から治さんって同級生に言われたらそりゃ変だよね。わかってたけど憧れの人君付けで呼ぶのもましてや呼び捨てで呼ぶのも出来ないじゃん!だからさん付けしてるんだけど···あ···なんで私は宮くんと呼ばないんだろ。
宮くんって呼んだ方が明らかにいいやん。
「おはよ、宮くん」
「···おはようさん」
治さん呼びから突然宮くん呼びに変わったことに少し驚いた顔をした治さんは、挨拶を返して自分のクラスに帰って行った。
「突然なんで宮くん呼びなん?」
「いや、嫌いな女に名前呼びされてるのはさすがに可哀想だなーって思って」
「いや、は??」
何を言い出すんだこの女、アホちゃう?っていう言葉を出しそうな顔で私をみてる侑の脛を蹴りながら、私は治さん、いや宮くんのことを考えるのであった。
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