治2 | ナノ

14.紙一重(fin)


「治、今日ほんとスゴい活躍だったね」
「優勝出来んかったけどな」
「それでも私の中では治は優勝だよ」
「...そんな可愛いこと言わんとって」


家に帰ってきて帰り道、コンビニで買ったご飯やデザートを広げながら治と話す。


治はお腹が空いていたのだろう、すごい勢いでご飯を平らげていた。


「家に帰ったらご飯あるんじゃないの?」
「ん?オカンのメシも食うで」
「治らしいね」


私も治の隣でプリンを食べる。


「なぁ、穂花」
「ん?」
「俺のこといつから好きなん?教えてくれるって言うたやん?」


あぁ、そうだった。
いざ言うとなるとやっぱり恥ずかしいな。でも、治も恥ずかしかったよね。けど、伝えてくれたもんな。


「あのね」
「おん...」
「治が私を初めて見た時大会あるでしょ?実はね、私も、その時初めて治のこと好きになったんだと思う」


始めは治の目をみて言っていたが、恥ずかしくて視線を下へ向ける。


「目ェ逸らさんといて」


視線を下に向けたことが気に食わなかった治は私に顔を掌で包み、自分のほうを向けさせる。


治の顔は嬉しそうに笑っていて、ふにゃっていう擬音が似合う顔だった。
その顔に弱いのに...、分かってやってるでしょ...。


「はよ言って」
「その時バレーしてる治に憧れた。あの時の私は、負けたことでバレー嫌いになりかけてた。でも治を見つけた瞬間、この人凄いなって、近くで応援してみたいって...」
「.....」
「私、治に会いたくて応援したくて...地元の推薦蹴って治に会いに来た」


自分で言ってて、これってまじで重くない?ただ一瞬みた話したこともない人に憧れて、追いかけて稲荷崎きたの、まじで引かれない?


「なんなんそれ可愛すぎん?」
「え?引かない?」
「引かん」


治の顔は真剣だった。
てっきり引かれるかと思っていたから拍子抜けだ。


「で、いつなん?好きになったの。それだけ聞いてたら俺憧れやん。俺はあの時が一目惚れやったっていったやん」


そうだよね
ちゃんと言わなきゃ...



「多分、私も治と一緒だと思う。初めて見た時から治が好きだったと思う。じゃないと稲荷崎まで来ないし、まぁ本格的に好きって自覚したのは2年になってからだと思う」


治はそれをきいて余計にニヤニヤしている。


「ほんまかわええ」
「...っん」


治は可愛いを繰り返しながら私にキスをする。


「ちょ、治...ぁ」
「穂花が可愛ええこというからやん」


いや、言ってない。どっちかと言うと本当に引かれるようなことしか言ってない。


「でもあれやんな。俺が泣いてる穂花みて一目惚れしたのも穂花が俺のバレーしとるとこみて一目惚れしたのも、よく言えば反対のこと思ったかもしれんよな」
「反対のこと?」
「おん...。ほらたかが中学のバレーで大泣きするなんてアホやなとか、一生懸命バレーしてバカみたいとか...傍から見たらそう思う人もおるやん。でも俺らお互いが、一目惚れやん」


ほんとだ。
お互い、一目惚れで済んだんだ。


バカと天才は紙一重というが、人生も恋愛も全て紙一重だ。



「ほんとだね!全て紙一重だ」
「な、これからも色んなこと紙一重で左右されることあると思うねん。でも俺は穂花が好きな気持ちは絶対変わらん」
「うん、私も変わらない」
「穂花好きやで」
「うん、私も好き」


治と額を合わせながら笑い合い、私と治は再度キスをした。


きっとこれから色んなことがあると思うけど、人生紙一重と思いながら、私と治ならなんとかなる気がするな。








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