キスで溶かして。




この感情を、知っている。





昔、アキに感じていた"何か"
黒くてドロドロとした感情。

それが今私を満たしている。
正しく言えば、アキの時に感じていたものの比ではない感情、だ。

突然現れた彼女"浦部リカ"
彼女は一哉を「ダーリン」と呼ぶ。

そして、結婚する…と言った。
彼女はサッカーも出来て料理だって出来る。

アキがカズヤやアスカに対する「好き」とは明らかに違うそれは。
私の感情と同じ「好き」なんだと実感した。




『ばか、みたい』


調理室に着いて、電気も点けずしゃがみ込んだ。
やるせない。
もどかしい。

本当は"オニギリくらい"と言われたとき、悔しくて悔しくてならなかった。
日本へきたのは最近だけど、そんな問題じゃない。とにかく悔しくてたまらなかった。

不格好なオニギリをいつも最後に食べてくれるカズヤは、あの日も美味しいよって食べてくれた。
だから、だから余計に。


『悔しい…』




優しさがひどく突き刺さる。


頑張ったんだけど、もういい加減呆れられたのかもしれない。
カズヤも、もしかしたら…彼女の方が、良いのかも。

なんて、不安になる。



『う、』

ぱた、ぱた。
目から沢山涙が溢れた。
視界が歪む。

どくん、どくん。
心臓が煩い。

かずや、かずや。
私これ以上耐えきれないかもしれない。


『もう…アメリカに帰ろうかな』
『名前、』

はは、と笑ったら名前を呼ばれて。
声の主が誰だろうかと思う前に、抱きしめられていた。

ふわり、優しい匂い。
温かな体温。

あぁ、私が今一番近くに居て。
一番遠くに居る彼、だ。
何でここへ来たんだろう。
嬉しいとかそんな感情よりも、なんで?ってそんな…疑問、しか浮かばなかった。


『名前…アメリカに帰るなんて駄目だ。俺が許さない』
『カズヤ…なんで、』

それは間違いなくカズヤで。
彼はいつもより少し寂しそうに声を出した。

『名前、昔俺に言ったこと覚えてる?』
『え?』

何か言ったっけ、なんて思考を巡らせていると、彼はぎゅうと私を抱きしめて答えた。

『俺がリハビリ頑張ってるとき、ずっと支えてくれていたのは名前だった』
『カズヤ…』
『またサッカーが出来るって分かった時、名前は言っただろう?「カズヤのサッカーを見守るよ」って』
『言っ、た…』

外の防犯灯がぼうっと差し込む暗い部屋の中、カズヤがクスリと笑ったのが分かった。

『ごめん、悪いのは俺だ』
『え?』
『立向居に、嫉妬した…』

ぎゅう、と私の手を握り、彼は俯いて。

『名前が、同じ気持ちだって…気付かないでさ…』
『カズヤ…』
『こんなに苦しいって、気づかなかった。嬉しかったんだ!名前が嫉妬してくれて…嬉しくて、彼女を拒否出来なかった』

ずるい、自分が居る。
カズヤは目を伏せて声を絞り出した。

それは、私も一緒だ。


『ごめん、』

ごめんね、名前…。
カズヤが謝る。
何度も、何度も。


『だから、アメリカに帰るなんて言うなよ』
『ん…、』


うん。
言わないよ。

そう言う前に、唇が重なった。
せっかち、なんだから…。


『ん、ふ、』
『は、』

壁に追いつめられて逃げ場がない。
元より、逃げるつもりはないけれど。


『ん、く…』
『しょっぱい』

べろり。
カズヤが涙を舐めてそのままその舌で口唇をなぞる。
はぁ、と興奮した彼はパクリと唇を食み何度も甘噛みをして、それに興奮した私は唇を開く。

『やっばい興奮する』
『ん…』
『誘うなよー』

舌を出せば苦笑いでそう言って、だけどやめる気は無くてそのまま誘いに乗った彼は雄の表情丸出しで。


『ん、あ、』
『ふ、』

声が漏れると同時にぴちゃぴちゃと舌が絡む粘着質な水音が響く。
角度を変えて舌を絡めてなぞって絡めて角度を変えて…。

久しぶりだから、余計に我慢できなかった。

『もっと、』
『名前、』
『もっと、キスして…』
『…うん、』


お互い、求めたら止まらなくなった。
久しぶりに触れたその感触を、もう少しだけ。






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外国ってキス濃厚ですよね←
え、それで済ますなって?
うはは。

次は沖縄に飛ぶよ!(笑)



犬猫(`ω´)


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