『油断した。』 『油断した』 "人は見かけによらない"とはよく言ったもので。 いつもオドオドキョドキョドしている彼氏の速水鶴正は、サッカーの時ばかりはしっかりと自身で判断し揺るぎない自信に満ちた瞳をしていて普段とのギャップもあいまって惚れる要素には十分すぎた。 けれどその"普段"と言うのが本当に、優柔不断と言うか自分の意見もまともに言えず、人に流されるままの毎日を生きているような…そんな人間だった。 『…いい加減諦めてくださいよ』 『うーん、悩み所』 『…意味が分かりません』 容姿は一言で言えば、 "ひょろっ" 背が高く、全体的に細いし手足は長いし贅肉所か筋肉も無いような"ひょろっ" 二つに結われた赤い髪は、カッコイイより可愛い印象。 目は凄く悪いから白縁の眼鏡をかけている。 速水鶴正と言われれば、今つらつらと述べた印象が一般的と言うかみんながそう答えるだろう。 彼と仲良しな浜野君達からしたらもっと内面的な話も出るかもしれないけれど。 …ここからは、私だけしか知らない速水鶴正の話。 『油断した』 『何回言うんですか…いい加減諦めたらどうですか』 『…はー、油断した』 『…』 ため息をこぼす私に、お風呂から半裸で現れて髪は未だ濡れたままタオルで拭きもせずに眼鏡だけはしっかりかけて上がってきた速水君が、低い声で怒りますよと言った。 ギシリとベッドを鳴かせて。 私は彼の下で最後に盛大にため息を吐く。 そんな私に彼は眉を顰め、掴んでいた私の手首を絞めた。 『馬鹿なんじゃないですか』 『…』 『俺だって、男なんですよ…』 ぽたり、髪から雫が落ちて頬が濡れる。 『知ってる』 『…知ってて、良く"油断した"何て言えますね』 ああ、彼は。 私の家で、私と二人きりで、お風呂に入りながら一人悶々と何を考えていたのだろうか。 確かに普段から女の子みたいで"可愛い"とからかうけれど、彼が男だと言うことは付き合ってる私が一番良く知っている。 大人しそうに見えて、意外と沸点は低い。 『それは、私が速水君を信頼してるからでしょ』 『え、』 『男でも、そこら辺の馬鹿とは違うって思ってるからでしょ』 『…』 目を逸らしたら、慌てだした。 冷えるのも、早い。 『あの、俺っ』 『結局は速水君も…シたいだけなんだ』 『えっ、』 『だって私が速水君を信頼してるって気持ち…信じてないみたいだし?』 『ち、違いますっ』 叫ぶように言って、自分がしている状況―‐上半身裸で彼女をベッドに押し倒している‐―を理解して青ざめる。 私が見つめれば、黒目がちな瞳がゆらゆらと揺れた。 『手、放して』 『っ、』 冷たく言えば肩を震わせ、掴んでいた手を解いて。 不安そうに眉をハの字に曲げる彼の眼鏡を取って、首に腕を回して引き寄せる。 体勢を崩した彼はアッサリ倒れてきて、私の胸に埋まったから腕をそのまましめた。 『速水君確保ー』 『…、』 もうこのまま寝てしまおうか。 私の提案にため息を吐いて、彼は口を開いた。 『油断しました』 end ▼ お泊まりして一緒に寝ようと言う彼女に、俺は男ですよと腹を立てた速水君が分からせようと奮闘したんですが、結局いい具合にノせられただけでした。 って話。分かりづらくてすみません。 ほら、ふいんき(何故か変換出来ない)で読んでください。 (笑) 速水リクがありましたので^^ 遅くなった上、甘くなくてすみません(゚Д゚)汗 犬猫 [追記11/28] 『ふいんき(何故か変換出来ない)』 はネタです…! 25動なんかで良く使われて居るんですが…^^;何時ものノリで書いてしまいました。 拍手にて親切にコメントくださった方、本当に申し訳無いです…!!汗 すみません、そしてありがとうございました。 犬猫 prev / next
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