ジレンマの砂嵐。



▼性悪ヒロイン注意。



『これ、霧野君に…』
『え?』
『渡してもらえないかな?苗字さん、霧野君の幼馴染みでしょう!?』
『まぁ、そーだけど』
『お願い、この通り!』


『何がこのとーりだ、自分で渡す勇気がねーんならラブレターなんか書くんじゃねーよブス!』








『おーこわ、』
『うるさい』

びりっびりに破けたラブレターを、蘭丸は苦笑いしながら並べてテープでくっつけてた。
これ、私が放課後受け取った蘭丸宛のラブレターの成れの果て。


『直接本人にそう言ったのか?』
『は?まさか。泣かれたら面倒だからね』


普通は何すんだよって怒る所なんだけど、あいにく蘭丸は私に滅法甘い。
一応、ゴメンってラブレターこんなしちゃったすまんって謝ったら、なんかニコニコしながら私の部屋まで来た。
因みにお隣さんだから、中庭伝って直ぐ。
玄関はあんまり使わない。親も、あら蘭丸君来てたのー程度。もう二世帯住宅的感覚。


『相変わらず二重人格だな、名前』
『うるさい。性格悪いのも、猫かぶってるのも本人自覚済みだから問題ない。因むなら自身で動けないアイツ等死ねばいい』
『…まぁ、名前の言い分も分かるけど…だからって、女の子にブスはないな』
『アタシの基準アンタだからちょっとやそっとの女見ても可愛いとか思わない』
『…お前、この間山菜の事可愛いって言ってなかったか?』
『茜は顔も可愛いけど性格も可愛いから可愛い。』
『要はお前が好きか嫌いかだな』
『…そうかもね』

よし、できたとガタガタでテープだらけのラブレターを、蘭丸は見た。
どうやらパズルはきちんと完成したようだ。

『あーあ、読める?』
『何だよ、あーあ、って』


はは、って苦笑いして私の隣に腰掛けた蘭丸は、どうやら文章を読んでいるようだった。

あの子の思いが、文字になって。
今、蘭丸に伝わってるんだ。

『っ、名前…?』
『やだ』

ぐしゃ。
手紙はわたしの手によりグシャグシャになった。もう、破かないから。
だから、そんな顔しないで。

蘭丸の肩に顔を埋める。
少し動揺した声を出して、優しく頭を撫でられた。

『どうした?』
『やだ』
『なにが?』
『私以外の子を見ないで』
『…見てないよ』
『嘘っ!』
『嘘じゃない。ほら、俺の目を見て』

嘘は吐いてない。
蘭丸のエメラルド色の瞳は揺れる事無く私を捕らえている。
蘭丸はまた優しく、私を抱き寄せて頭を撫でた。

『蘭丸は、』
『うん、』
『昔から、私の蘭丸なの』
『あぁ、』
『神童にもやらない』
『神童は男だろ…』
『男とか関係ないもん』
『…俺、名前のそーゆー何処に向くか分からない嫉妬心が凄く好きだよ』
『…なんで?』
『愛されてるって実感するから?』


何で疑問系なのよと言えばクスクス笑われた。私はおもしろくない。

『…ごめんなさい』
『何が?』
『ラブレター破って』
『いいよ』
『…どうするの?』
『どうって…とりあえず今、滅茶苦茶名前にキスしたい』
『…、ばか。ラブレターの返事だよ』
『後で考える』
『…何それ』
『断る文句を、だよ?』
『どうせサッカーを理由にするんでしょ』
『…それが一番無難かな?』
『無難、』
『何、サッカーにも嫉妬か?俺愛されてるなぁー』
『違っ、ん、ん…』


もー黙れよ。
そう言われた気がした。

綺麗な顔が目の前にある。
唇は啄まれて甘く甘く噛まれて。

昔から変わらない優しい蘭丸。…でもやっぱり、蘭丸はオトコノコなんだ。
女の子にはモテるし、背は段々伸びてきて力だって強くなった。
私の束縛なんて、するりと抜け出しちゃうんだ…きっと。


『ん、んんっ』
『あれ泣いてるの名前?』
『く、るし…』
『ああごめん』

べろりと蘭丸が私の目尻を舐める。
涙が無くなって薄く目を開いたら、同じく泣きそうな蘭丸が見えた。
そっと手を伸ばして頬に触れると、またぎゅうっと抱きしめられて。







繰り返してる
無限のループ






ラブレターを渡される度、私は破る。
蘭丸は嬉々として家へとやってくる。
つまりは私たちの、愛の確認なんだ。



ごめんね、叶わない恋いさせて。






end




意味分からんww
とりあえず二人ともマジキチ。




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