episode:01 『消えてる…』 どんどん薄くなっていく。 私は…このまま。 『消えてしまうの…?』 ■ 『事態は深刻です』 博士がつぶやいた。 『調べたけど、名前のじーちゃんまでの過去には何にも変化は無かったんだ』 ごめん、とカノンが俯いて。 『と言うことは、ですよ』 『名前のひぃじーちゃん…あの人に何か有ったんじゃないかって、思うんだけど』 『ひぃ、おじいちゃん…?』 『あぁ』 確か、私の曾祖父と言えばカノンの曾祖父と仲良かったって話。 『俺、調べてきます!』 『頼みましたよ、カノン君!』 『まって!』 駆け出すカノンを呼び止めて、私は一歩前へ出た。 『私が、行く』 ・ ・ ・ ある日突然。 写真の中の私が薄くなり始めた。 どう言うわけか、友達が私の存在を忘れ始めた。 今では博士とカノン、私をハッキリと覚えているのは二人だけ。 博士曰く、過去で私が生まれなくなる様な"何か"が起こったのではないか。と言うことだ。 今は亡き父と母、祖父母の過去を調べて貰ったが、特に何かが有るわけではなく。 私はちゃんと生まれたにも関わらず、同じ歴史を辿るのだ。 原因不明の事態に、博士も頭を悩ませて。 カノンも賢明に調べてくれていた。 けれど、やはり原因は分からないまま。 日に日に薄れていく恐怖におびえて暮らして、泣いて悩んでいたら。 疲れた。 私、ウジウジするの嫌いなの。 ・ : 『―…て、訳で勢いで来たけど…』 80年前の雷門、か…。 確かに、曾祖父の写真で見た風景だ。 きっと、ここだ。 歴史はここから始まったのだから。 何が何でも、原因を突き止めなければ。 私の、未来のために…! 『あまり近づきすぎるのは危険では…』 『遠くちゃ見えない部分が多すぎます!』 しかし、と言葉を濁らせる博士を押し切り、私は手続きはよろしくお願いしますとだけ言って通信を切った。 さぁ、私は明日から。 『雷門中の2年生よ!』 next prev / next
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