episode:00 - o p e n i n g - 『沖田さんっ!』 急に容態が悪くなった沖田さんを屯所まで運ぶ。 どうやら試合をして、相当身体に無理をさせてしまったようだ。 『皆はここで待機してて!』 『名字先生!』 『お一人で大丈夫ですか』 心配する皆を見て坂本さんを見る。 まだ大政奉還云々、話が終わってない。 『あなた達は、この歴史を見届けなさい』 サッカーで変えたこの史実を、この子達は見届ける義務がある。 坂本さんに子供達をよろしくお願いしますと頭を下げて、沖田さんを追いかけた。 ◆ 『すごい熱…』 病気なのにあんな無理をして…。 濡らした手拭いを当てるけど…意味ない。 確か救急箱に冷えピタがあった筈と箱を開き、ぶっちゃけこんな事して大丈夫なんだろうかと一瞬躊躇したけれど苦しんでいる沖田さんを見たら吹っ切れた。 私は馬鹿か。そんな事言ってる場合じゃないでしょ。 『冷たいですよ、ビックリしないで下さいね』 『っ、』 一応告知したけど、額に貼ったら驚いたらしく息を詰めた。 本当は腋とかにも貼ると良いんだけど、心臓止まったら洒落にならない。 薬剤クラッシャーで錠剤タイプの解熱剤を粉にして、懐紙を貰っていくつか包んだ。 『沖田さん、お薬飲めます?』 『…あぁ、』 隊士の人に手伝って貰い身体を起こして薬を飲ませる。 薬は直ぐ溶けたらしく、咽せずに喉を通ったようだ。 『大丈夫ですか?』 『ああ、すまない…』 なんて消え入りそうな声…。 横になった沖田さんは次第に落ち着いてきたらしく、すうっと眠りについた。 暫くしたら解熱剤も効いたみたいで、熱も下がった。 『ありがとうございます!』 『あー…いや…そんな、頭を上げてください』 『名字様がお医者様とは知らず!今までの無礼お許しください!』 『いや、私医者ではないですけど…』 『は…しかし、子供達は"先生"と、』 『あ、えーっと…先生は先生でも寺子屋で勉学を教えていると言いますか…』 なんて説明すべきかとあーだこーだ言っていたら、医学を教えてる先生と勝手に納得された。 まぁ、良いや。 『これ、熱を下げるお薬なのでまた高い熱が出たら飲ませてあげてください』 『はい』 『後は身体が弱っているのでなるべく栄養があるものを…』 と、確か鞄に…。 ガサゴソと鞄を漁る。 あった、リポ○タン(ノンカフェイン) 『そちらは…?』 『栄養剤です』 『はぁ…』 『半分ずつくらいで飲ませてください』 この時代の人間が栄養ドリンクなんかをいきなり摂取したら逆に悪そうだ。 瓶を受け取った隊士の人は訝しげにそれを見つめる。 まぁ栄養が取れるお薬ですとか言われてもピンと来ないだろう。 『じゃぁ、私は行きます』 すっかり落ち着いた沖田さんを見る。 最後にさよならが言えないのが惜しいけども。 『呉々もご無理をなさらないようにと、お伝え願えますか』 『はい…』 さようなら、私の憧れの人。 ◆ 『名字先生…何で泣いてるの?』 『ひ、土方さんに…会いたかった…っ』 時空の狭間で、小さく呟く。 流石名字先生、歴女だねと瀬戸さんに笑われたけど…折角だから一目だけでも見たかった。 隊士を一番隊から並べろとは言わないから…せめて副長をぉおぅ 嘆く私に、剣城君が心配そうな顔をして訊ねてきた。 『先生、沖田さんは…』 『ああ、落ち着いてたから大丈夫よ』 『良く薬飲んでくれましたね』 『あなた達が"先生"って呼んでたから医者と勘違いしてくれたみたいで…』 『なるほど』 瓶のラベルも剥いだし、薬も潰して懐紙に包んだから歴史上あまり影響は無いと…思いたい。 『写真が変わらないって事は、坂本さんダイエット成功したんだね』 現代に着いてキャラバンから降り、皆でそう笑いあっていた時だった。 大変です大変ですと帰った私たちを見つけた速水君が走ってきて。 『お、おおっおおお!』 『速水?』 『落ち着いて速水君』 『お、おおお!』 『ただいま、』 『他の皆は?』 『お、おお沖田総司が!』 『ああ、沖田さんイケメンだったよ』 『じゃなくて!』 『なんぜよ…』 落ち着けよ、と瀬戸さんに叩かれてむせた速水君は未だ興奮しているのかはひはひ言いながら。 『沖田総司が!来ているんです!』 と叫んだ。 next 来ちゃった。 ▼補足? 錠剤クラッシャーってのは、錠剤を粉にするための機械です。 ピルケースみたいな手のひらサイズの容器に入れてグリグリ回すだけで粉になる優れもの。 同じく、錠剤カッターなんてものも(量調節とかの為に錠剤をカットする機械)。 私は動物看護なんで人に使うかは知らないんだけど(←)、でも錠剤飲めない人も居るから有るよねって事で。 錠剤クラッシャー?薬クラッシャー?って言ってたけど、正式名称は知りませんすみません。 prev / next
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