episode:06 『沖田さん、起きれますか…?』 朝日を浴びて、ふわりといい匂いがして。 目を開けると女の影がぼやけて見えて。 屯所に女が居るはずがないのに、と考えああそうか、ここは実家だったかな…と寝ぼけ眼で口を開いた。 『姉上、』 『…』 ふわふわしていてなんだかとても気持ちが良いのです。 だからもう少し寝かせてくださいとそこまで言って、目が覚めた。 『…!』 『あ、起きた』 『お、きた…?』 『え?あ、いや、沖田さんが起きた…って何ておやじギャグ…劉備さんがうつった…』 『…?』 『…何でもないです』 こほん、と一つ咳払いをして、彼女はおはようございますと言った。 『私はお姉さんでは無いです、残念ながら』 苦笑いを浮かべるのは名前。 そう、名前…未来から来たと言う…いや、逆か。 『そして残念ながら、夢じゃないですよ』 『…そのようだな』 俺が未来へと来てしまったのだと、改めて理解して…彼女の方を向く。 苦笑いする彼女におはようと言うと優しく返され、朝食が出来ていると言い部屋を出ていった。 朝、早く起きたのかと申し訳無く感じながら昨晩の事を考える。久しぶりに良く寝たなぁ、と欠伸をして…彼女のふくよかな胸に埋まった事を思い出した。 『…、俺は何をしているんだ…』 朝は一体どう言う格好になっていたんだろうか。 まさか抱き締められたままと言うことは無いだろう、うん、たぶん。 彼女は普通だったし…、と考えれば考えるほど何だかモヤモヤとしてきたからとりあえず思考を中断した。 埒があかない。 顔を洗って彼女の元へ行けば朝食が用意されていて、彼女は外で洗濯物を干していた。 『…そんな狭い場所に洗濯物を干すのか』 『わ、びっくりした…。マンションだから仕方ないんですよ、ベランダがあるだけ良いんです』 『た、高いな…』 手すりを掴んで下を覗けば、人が小さく見えた。 昨日は変な狭い部屋に入ったらすぐこの部屋に着いた為に、まさか自分がこんな高所に居るとは知らなかった。 『まぁ11階ですからね』 此処は城か何かかと聞いたら笑われた。 …そんなに笑わなくても良いじゃないか。 恥ずかしくて口を閉じると、悪いと思ったのか名前は話を変えて。 『沖田さんご飯食べないんですか?』 『名前は食べたのか?』 そういえば、と台を見ると一人分の食事。 ご飯と味噌汁と魚と…馴染みが有るものばかりだ。彼女の配慮なのだろうな。 しかし食事は一人分、だ。 『ああ私は良いんです。朝はコーヒーだけで』 『こーひー?』 籠をもって部屋に入る名前はこぽこぽと音を立てる黒い何かが入った硝子の容器を取ると大きな湯呑みに注いだ。 何だこの如何にも毒々しい色合いは、と見ていると、名前は戸惑いなくそれを口にする。 『…そんな嫌そうな顔しなくても…』 『あ、えっと…すまん…』 知らないうちに怪訝な顔をしていたようだ。 その、こーひーと言うのは美味いのだろうかと興味が湧いて、名前に言うと苦笑いでたぶん美味しくないですよと言われた。 『不味いのに飲むのか?』 『不味いと言うか…』 『…不味くはないのか、』 『うーん、飲んでみます?』 差し出された彼女の湯呑みを受け取り少し飲んでみる。 口の中に入れた瞬間、酷く後悔した。 『に、にが…っ』 『だから言ったじゃないですか』 『これは薬か何かか?』 お茶を渡され飲み干す。 なぜこんな物を飲むのかと問えば、 『薬じゃないですけど…おいしいから飲むんですよ、眠気も覚めるし』 『…理解に苦しむ』 と言うと、彼女はまた笑った。 next ぐだってる気がしてならない(゜∀゜)汗 prev / next
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