生臭


「お気を付けください。」

いつも笑顔な天女様が服を斬りつけられ真っ青な顔をして肩を震わせて自分の後ろに隠れている。町の偵察に色々聞き回っていたら帰り道にお使いを頼まれた天女様に会った。折角だからと一緒に学園に帰る途中に山賊にいきなり襲われたのだ。

「ちっ後少しで肌も切れたのに。」
「お前も可愛いな。物好きなおっさんが好きそうな顔をしてるなあ。」

交互に話す二人の山賊は睨んでいる自分の顔を見て気持ち悪いくらいニヤついた笑いをしながら詰め寄ってきた。天女様のご無事が優先。

「学園へ。足を止めずに」

自分の言葉を聞くとコクっと頷き学園に走って行った。自分の周りに敵以外居ないことを確認すると口当てをして息を大きく吸って止めた。懐から素早く忍刀を出してしびれ薬を塗り敵の背後に飛び足の付け根の神経を切り裂いた。口当てを外して息を吐くと激痛に気絶して足元に倒れている山賊を見た。

「血が臭いな。」

返り血なのか頬に付いた生温い赤い液体を手の甲で拭いたあと最初に天女様を庇ってついた傷に薬を塗った。五年生になってから何度かこうやって誰かを追い込むような仕事をした。

「えげつない。」
「三郎。」
「迷いもせずかかと切って。」
「追っかけてこないことが優先だった。」

木の上から三郎が下りてきて隣に並ぶ。私服だったから三郎も外に出ていたのだろうか。

「ここから少し離したいから手伝って。」
「おう。」

ずるずると引きずりながら気絶している山賊を離れた場所に運んだ。足を止血して傷薬を塗って化膿止めも置いて離れた。

「慣れないなあ…。」

三郎と並び苦笑いを浮かべながら学園に足を進めた。自分は息を止めてる間は集中出来て何も考えずに切れるでも吐いた瞬間悪い人でも罪悪感でいっぱいになって視界が霞む選んだ道だけど辛い。

「誰も慣れはしない。でも、お前は女だろ…無理に手汚すことない。」

頭をポンポンと撫でられると三郎の優しさ涙が零れた。足を止めて涙を拭くとそのまま抱き締められた。

「だから、お前は一人で抱えて任務の後に部屋に引きこもるのか。」

弱いところを見せたくなくて特殊な任務の後は部屋に閉じこもっていた。誰も何も言ってこないから次の日には外に出ていた。気づかれてないと思っていた。

「私は周りよりお前のことを知ってる。だから頼ってもいいんだぞ?」

宥めるように優しく背中を撫でられ溜まっていたものが溢れるように涙が止まらなくなり三郎にしがみつくように服を掴んだ。三郎の腕の中で子供みたいに声を上げて泣いた。

「…ごめん。ありがとう。」

その間も嫌な顔一つせずただ落ち着かせるように頭を撫でてくれた。

「もう、大丈夫か?」
「うん。」
「勘右衛門達が待ってる。帰ろう。」

何もなかったように離れ少し寂しさを残ったが並んで歩きながら学園に戻った。

「鈴!三郎!おかえり。大丈夫だった?」

勘右衛門が正門の前で心配そうな顔をして待っていてくれた。自分達を見つけると駆け寄ってきて自分の両頬に手を添えた。

「顔色悪くない。傷は…浅いけど肩にあるね。心配したんだよ、天女様が泣きながら帰ってきて鈴と山賊に襲われたって。」

良かった。無事に学園についていたんだ。ほっと胸を撫で下ろすと頬を膨らましている勘右衛門を見て困ったように笑う。

「勘右衛門ありがとう。心配させてごめん。」
「ほんとだよ、もう!無事でよかった。」

怒った素振りをしながらも嬉しそうに笑う勘右衛門と一緒になって笑った。

「三郎なんか凄いんだよ。鈴の名前聞いた瞬間すぐに居なくなったからね。」
「勘右衛門余計なこと言うな。」
「あいたっ。」

三郎が勘右衛門の頭を叩くと自分に添えられていた両手が外れて二人で取っ組み合いを始めた。それが可笑しくて今日のことは心に残らずすっきりできそうなぐらい笑った。




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