周りのものを調べた結果、この世界は統制機構も第七機関も存在しないらしい。
十二宗家すらもない。
暗黒大戦もなく、イカルガ内戦等の戦争もなかった随分と平和な世界らしい。
世界に溢れる魔素は偶然発見された窯からでてきた、こちらでは謂わば資源の類いらしい。
黒き獣とはなんの関係もないみたいだ。
だが帝は存在するみたいだ。
当然だろうどんな世界であろうと統べるものがいなければ機能などしないのだ。
この世界のハザマは作られたものではなく、生き物として普通に母体から生まれてきた人間みたいで、アルバムに別世界から来た私にはまったく見覚えのないがこの体の本来の持ち主には懐かしいと思えるらしい母親や父親の写真を見つけた。
そしてそのアルバムに見覚えのある、いや見慣れた姿もあった。
年は十二くらいだろうか?青年と呼ぶにはまだ早い、緑の髪の三人の少年の写真。
右端にはたぶん私であろう少年が。
真ん中には髪を立ていて性格の悪そうな笑みを浮かべる少年。
その左には前髪が少し長く目元が隠れていて落ち着きのある雰囲気のある少年。
「テルミさんとカズマ=クヴァルでしょうか?」
なるほど、こちらの世界では一人の人間ではなく、私たちは兄弟関係であるようだ。
アルバムを捲っていると何処からかドタバタと音が聞こえてきてその音は次第に大きくなっていく。私の部屋に誰かが近づいてきている。
大きな音をたて乱暴に部屋のドアが開かれた。
そこには不機嫌そうなナマエの姿があった。
「ハザマさん!」
「如何なさいましたか?」
そんなに怒ってなんだと言うのだ。
私が何かしたのだろうか?
「今日の参観日来るって言ってたじゃないですか嘘つき!」
「は?」
思わずこの世界に来た時と同じような反応をしてしまった。
そういえば大佐はカルル君の参観日に行ってましたね。
参観日と言うワードが出るということはナマエを同じ学校の学生ということでしょうか。
「すみません、忘れていました」
とりあえず形だけの謝罪をするとナマエは怪しむように私を見る。
「嘘」
「はい?」
「本当に忘れてたなら何時もならもっと取り乱すじゃないですか」
そんなことを言われても正直私にとってはどうでもいいことなので必死に謝ったりする気にはなれなかったのです。
「いやだなァ本当ですよ」
「……なんだろう、昨日からハザマさん変じゃないですか?こう、何時もより毒気のあるというか」
「気のせいじゃないですかね?」
私の返答に納得をしていないのか口をへの字に曲げながらも確信めいたものがないのかこれ以上は追及してこないようだった。
20240219
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