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▽ 03 きみが目指す空抱く






豊臣秀吉の絶命、徳川家康の謀反。
未来を知る私にとっては、概ね予定通りだった。
そろそろ石田三成が徳川家康との決別をむかえている頃だろう。


- - -


「…………こんにちは」
「ッ!」


先程からこちらを観察していた忍の隣に瞬間移動すると、彼は露骨に息を呑んで武器を構えた。
こんなことでは安心するとも思えないが、柔らかく微笑んでやる。


「こんにちはー」
「…………こんにちは」


お、返事してくれた。なかなかノリの良い人物らしい。
私はハンズアップして武器のないことを示し、体の前で手を合わせた。


「はじめまして、私、きた村英梨って言います。よろしくです」
「…………はあ」
「お兄さんの名前は?」


出来るだけ無邪気そうに問うと、彼は少し目元を優しくした。


「…………猿飛佐助」
「佐助さん」
「…………」


親しみを込めて下の名前で呼ぶ。
警戒心を解く基本だが、流石は忍。まだ目つきが鋭い。
嫌な相手だ。
殺してしまおうかと考えて、慌てて殺気を抑えた。


武田軍は、使えるはずだから。


「…………俺様からも一ついい?」
「あ、はい。どーぞ」
「…………君は、何者?」
「英梨でいいですよ」


断りを入れて少し考えるが、想定内の質問である。
私はニッコリと笑ってすぐに答えた。


「ヒーローやってます」


猿飛佐助は露骨に訳がわからんという顔をした。


「…………ひいろお?」
「英雄?正義の味方?そういうやつです」
「…………正義の味方」
「そうです」


ここは迷いなく答えられる。
出身地や年齢よりは格段に答えやすい。
猿飛佐助は何か考えているようだった。
こちらから視線を少し逸らし、遠くを見るような目付きをしている。

やがて、彼は口を開いた。


「…………じゃあ、武田軍に来ない?」




1059時代は激しく回転を始める。
気づいていないのはその駒たちだけ。
操るのは私。
誰を助けて誰を堕とすか。


すべては私の采配。



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