イシュヴァールと軍


「ハボ!あのね…お願いがあるの!」

困ったところに助け船と言った所だろうか…ハボックがこちらに向かって歩いて来るのが見えたので、彼に走って近づいていく。ナマエは、彼に車を運転して現場まで一緒に行って欲しいとお願いすると、二つ返事で了承し彼女の話を聞き始める。

「あの公園か…了解!一応、中将に言ってから行くから、先に車乗ってろ。」
「ありがとう!本当に助かる。朝早くてまだ部下来てなくってさ…。」
「お前の運転ヤバイもんな。」

これに対して、ナマエは「そうなんだよねー。」と笑うとハボックから車の鍵を預かり駐車場に向かう。車の中で彼が来るのを待っていると、数分後に走って来るのが見えた。

「悪りぃ。中将が私も行くってうるさくってな。ちょっと手間取った。」
「いや大丈夫だよ。マスタング中将相変わらずだね。」
「また、ホークアイ少佐に怒られてんだよ。懲りない人だよな…。」
「リザも大変なんだね。」

ハボックとは、マスタング隊で一緒に働いてた時から年齢の近いこともあり仲が良かった。この様な話をするのは良くあることでロイ達の話は全て彼やリザを経由してナマエの耳に入っていた。

車の中でも、お互いや周囲にいる人間の話をしながら現地まで向かう。ハボックの話によると、どうやら明日はマスタング中将が休みであるため、それを確保するために今は必死で働いているそうだ。

「へぇー、中将…ちゃんと働いているんだね。」
「珍しいだろ?」
「うん。やれば出来るんだからしっかり働けば良いのにね。」

二人は、笑いながらマスタング中将の話をする。ナマエは最近彼と話せていないので情報が少しでも入ってくるの嬉しかった。会いたい気持ちはあるがお互い忙しくてそれどころではない。陰でそっと彼の事を想うだけで今は幸せだった。

このような話をしていると時間はあっという間に経ち、直ぐに現場に着く。

二人が車から降りて現場に向かうと、そこには既に近くにいた軍兵がいて、イシュヴァール人たちと話をしている。ナマエは、あまり問題はなさそうだなと安堵していると、イシュヴァール人の一人が軍兵に殴りかかった。

「ふざけんじゃねぇ!!悪いのはアイツ等だ!!」

叫びながら、軍兵に拳を振りかざす彼を見て。ナマエは頭を抱えながらハボックに「さすが、イシュヴァール人強いね。」と笑う。彼も苦笑いで同意をする。恐らく、軍兵の言い方に腹が立ったのだろう…今でも、アメストリス人はイシュヴァール人を下に見ているところがある。彼女は、仕方なく彼等に近付くと落ち着かせようと声をかけた。

「落ち着いて、話聞くから。どうしたの?」
「こいつ等!俺たちが悪いって決めつけたんだ!イシュヴァール人だからって!」

イシュヴァール人は怒りをナマエにぶつけて叫びだす。彼女は、それに対して怯まずに笑顔で話しかけていた。

「そっか…それは悪かったね。とりあえず、落ち着いて話をしてもらえると助かるんだけどなー。」

ナマエがそう言うとイシュヴァール人は少し落ち着きをとり戻しゆっくりと話し出した。どうやら、アメストリス人から喧嘩を吹っ掛け、最初は無視していたが自国をバカにされた事に腹が立ち殴ってしまったようだ。相手側は逃げたらしく、大事には至っていない。彼女はこのイシュヴァール人に名前と住所、電話番号だけ聞いてとりあえず家に帰した。

イシュヴァール人もちゃんとした環境で生きれるようになった。軍の努力が明白に表れている。軍兵の方も殴られたものの出血程度ですんでいるので大丈夫そうだ。

ナマエとハボックはこの場を後にして、職場に帰ることにした。

(大総統もサボリ癖があるからな…今日が期限の書類が出来上がっているか確認しないと…。)
(まぁ、中将は今日まではちゃんと仕事するだろうな。)

2人は全く別の心境で各々の職場に戻っていくのだった…。


2016.1.31


prevnext
listに戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -