Am I The Player?Are you The Singer of Lullaby?

白い壁、白いソファ、白い椅子、白いピアノ。全てが白いここは、千年公も知らない14番目の秘密部屋。もう一つの心臓が眠っている部屋。男はティムキャンピーとアレン、その二つが奏者の資格と言った。つまり、それは…考えたくない。

ピアノの前で戸惑う白い頭の少年は、ティムキャンピーが映し出した一つの楽譜を目の前にして驚愕していた。


「そんな…これは、この文字は…!」


幾何学な模様をした、円状に描かれた不思議な楽譜は到底楽譜には見えない。けれどなぜか自分はこれが楽譜に見えてしまう。歌詞は自分とマナが遊び半分で作った暗号が示している。幼少から共に過ごしてきた彼女さへも知らない、二人だけの文字だ。

恐る恐る鍵盤に指を伸ばす。けれどあともう少しのところで指が鍵盤に触れることを拒否する。弾かなきゃいけないのに。方舟を操作しなきゃいけないのに。しかし僕は今、心のどこかで何かを恐れている。怖い。


「大丈夫、アレン。恐れることはないだろう?」


落ち着いた、大人の女の声が耳元でした。今この部屋には自分とティムキャンピーのみ。「誰だ!」後ろ下がりに一歩距離を取った。視線の先には白衣に、自分と同じほどの白い髪をした女が立っていた。紫のフローライトの瞳が煌めく。


「…メアリー?」
「アレン、今は方舟を動かして」


いつもの姿よりいくつも歳を重ねた形をしている彼女に戸惑いを感じる他ない。
さあ、と彼女に手を引かれ指が鍵盤に触れた。そのまま、指が勝手に旋律を奏でていく。生まれてこのかたピアノを弾いたことなどないのに。なぜ、歌も脳内で響いていく。不可解な現象なのにどこかで受け入れているところもある。

ザ、と左耳の通信機からノイズが聞こえた。


『方舟を!操れアレン!お前の望みを込めて弾け!!』

望め。謎の黒い男が囁いた。

「望みは、ダウン、ロードを…方舟を…僕の、望みは……」


師匠と、男の声に思考が止まる。望みを、早く、時間がないのだから。いつかのようにぐるぐると脳内で考えが渦巻くばかりで、早くしなければと焦ってしまう。


「難しいことは考えなくていいよ、アレン。君が欲しい家を、思い浮かべてごらん」


メアリーの声に妙に頭がスッキリした。アジア支部から方舟に入り込んだ時のコムイさんとの通信が思い出される。帰ったらまず何をしよう。そんなことを話していたはずだ。
シンプルな思考回路を持っているメアリーは、いつも難解な問題を解くためのヒントをくれる。たとえ暗闇の中迷子になっても、メアリーはランプを持って迎えに来てくれるだろう。そして安心させる言葉をかける前に、少年、と少女にしては落ち着いた声で呼び掛けるのだろう。

指がもう一度メロディーを弾き始めた時、メアリーは自分の頭を一撫でして傍にあった椅子に腰掛けた。メアリーが歌詞をなぞっていく。子守唄だ。どこか心地良くて、安心する。

僕の仲間を返せ。両手を鍵盤を思い切り叩きつけると、大音量の不協和音が響いた。


「消えるな!方舟ぇぇええええ!!」

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