Failed creature and Walker got to The Order of Darkness.

マナを壊してすっかり廃人状態だった少年に、一時はどうなることかと思ったけれど…吉報朗報。なんとか立て直すことができたのだ。別のエクソシストに拾われ、少年もエクソシストとなる道を選んだ。そのエクソシストはなんと元帥、しかも旧知のクロス・マリアンだった。彼の人柄を知っている分、下手をすれば少年は死ぬんじゃないかと思ったけれど、少年は何とか立派な成長を遂げた。結果論だけども。
そうだね。確かにクロスは人間性に問題があるけれど、彼に教えを請うたことは間違いでなかったように思える。クロスの過激な修業(修業とは言い難い代物だが)により、それなりに少年はイノセンスを扱えるようになったんだから。後おまけでカードのイカサマ術とか借金取りからの逃げ方とかもね。私は何もしなかったのかって?少しはしたよ、少しは。全面協力をするわけないじゃないか。獅子は子供を自立させるために崖から突き落とすという。私は少年の保護者ポジションなんだもの。当然の行為でしょう?

さて、そんな経緯を経て私と少年、それからティムキャンピーは今教団への道筋を歩いているわけだが。クロスは不在だ。なぜかって?失踪したからに決まってるじゃないか。そろそろ少年も正式にエクソシストを名乗ってもいいことだろう、とクロスが判断をし、黒の教団に向かうことを指示したのだ。本部に着いて手続きを済ませれば、これでアレンも正式なエクソシストに。おめでとう、ここまで長かったね!
で、本来であれば師であるクロスも同行する必要があるのだが。「俺、あそこ嫌いなんだよ」という言葉と共に少年の頭にハンマーが振り下ろされた瞬間は流石の私も驚いた。その後は紹介状を送ってやっといたし、ティムとメアリーもいるから平気だよなと言い残して文字通り姿を消した。少年、よくクロスの弟子なんてやってられるね…。

それにしても黒の教団、か。一体何年ぶりの帰還になることやら。今でも思い返せば黒い塔が脳裏に浮かぶ。…ついつい、感傷浸ってしまうな。


「…ん?少年?おーいしょうねーん?」


おかしいな。いつもなら僕の名前は少年じゃありません!って返事が返ってくるはずなのに。迷子かな?やれやれ手間のかかる。いつまで経っても少年だね。
街行く人の中に目立つ白髪の子供はいない。ぼちぼち探せばいいか、とレンガ造りの建物を見上げた。路地裏に入り込み、勢いをつけて壁を蹴り、屋根の上へ登った。見下ろせばそこにはさっきまで低い目線で見ていた景色が広がっている。この町には一体何人の人間が暮らしているのだろうか。AKUMAが好みそうな町だ。
順々に町を眺めていって、その中に墓地を見つけた。墓地、と言えば少年の髪が白くなったあの日のことを思い出す。ちょっと覗いていってみようか、とそちらに足を向けた。


「…本当に、今日はよくあの日のことを思い出す」


墓地、大きな月、それからウサ耳。なんか最後のでシリアスな雰囲気が崩壊した。


「やあ、少年。もしかしてピンチだったりするのかい?」
「メアリー!どこにいたんですか!」
「迷子になっていたのは君だろうに、少年」
「メアリーです!…っと!」


大勢のAKUMAと交戦中なのに私と会話できるなんて余裕だね、少年。油断は禁物なのに。

さぁて、少年はAKUMA破壊に集中して。私はパタパタと羽ばたきをしながら近寄って来たティムキャンピーと戯れる。


「メアリー?メアリー……。そうデス…お前は、メアリー・ホワイト……!我輩の失敗作!」


こんなところにいたなんて…!とウサ耳伯爵は眼鏡の奥から私を鋭く睨み付けた。激しい憎悪。嗚呼恐ろしや。鳥肌が立った腕を擦ると同時に少年がAKUMAの殲滅を完了した。
それを悔しそうに舌打ちしたウサ耳伯爵は高笑いをし、世界の終焉を宣言して、いつかのように去って行った。

伯爵は完全に私を認識した。これでアレンもノアに目をつけられてしまうだろうか。まだ早すぎると思うのに。


「メアリーもティムも…いつもいつも、探しに行く僕の身にもなってよ」
「迷子になったのは私じゃなくて少年じゃないか」


「だからメアリーです!」と少年は声を荒げた。


「やれやれわかったよ少年。黒の教団へ行くんだろう」
「わかっているなら…それから僕の名前はアレンです」
「はいはいわかってるよ、少年」

△▼△▼

エクソシストの本山、黒の教団の総本部はとある断崖絶壁の崖の上に位置する。


「はーい頑張れー少年。負けるなー少年」
「んで、僕よりメアリーの方が楽々進んでるんだっ!」


そりゃまあ肉体構造からして違うしね。

というわけで絶賛命綱無しのDEAD or ARIVEのロッククライミング中。ほんのちょっとの油断が命取りになっちゃうぜ、少年。これも修業のうちよ…。Do your best!死なない程度にね。

何時間かかけて辿り着いた頂上では大量のゴーレムにお出迎えされた。そして目の前にそびえる目的地である黒い塔。インドから遥々云百qほど。フルマラソンの何倍の距離だろうね。
しかし少年、いつまでへばってるんだい?メアリーの体力が異常なんですよ…!それから、少年じゃなくてアレンです…。
失礼、といつものように返して道を進んだ。相変わらず真っ黒ーい教団だこと。大きな門の、これまた大きな門番に目を奪われてる中、少年がゴーレムで教団の人に話しかけていた。にしてもこの門番、やっぱり私が教団にいた時のやつと代替わりしてるよね。


「こいつアウトォォオオオオ!!!!」
「うわびっくりした」


少年、レントゲン検査引っかかったんだ。左目の呪いのペンタクルがアウトの証拠、だってさ。もちろん少年は必死に否定してるけどね。
ふぅむ。にしてもやはり100年前とは随分と雰囲気が違う。建物自体は特に変わった様子はないのだけれど、何と言うのだろう…オーラ?オーラと言えばさっきから殺気が痛いなぁ。少年と、また別の少年、日本刀と言うのだろうか?それを振り回してるからサムライ?がどんちゃんやってて大変危ない。怪我したらどうしてくれるのだろうか。ねぇ、ティム。


「そういえばクロスが室長に送ったと言っていた紹介状はどうなったのだろうか?」


ポツリ、と呟くと周りの全てが硬直した。む。ゴーレムから聞こえてきていた中の様子が慌ただしくなったようだ。


『そこのキミ、ボクの机調べて!』
『ぇ、えーっと…!あ、ありました!』
『読んで!』
『“コムイへ。近々アレンというガキとメアリーというオレの友人をそちらに送る。バカ弟子はどうでもいいが、メアリーに変な真似をしたその時はぶっ殺す。クロス”です!』
『攻撃中止ー!!特に女の子の方は丁重にお迎えして――!!』
『たまには机を整理してくださいよぉ!!』


黒の教団は100年のうちに楽しそうな職場に変わったみたいだ。重苦しい音を立てて門が開いた。

長らくただいま。…時に少年よ。自分だけ大層な歓迎を受けたからって、そんな恨みがましい目で見つめないでおくれ。

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