▼一文惜しみの百失い(3/4)
「それではどうかよろしくお願いします、ジャンニーニさん」 「はい。お任せください」
来るべき決戦の日はもう間近。チェデフのバジルさんと合流したことで戦力は僅かにアップ。アジト内では各々が準備に追われている。
チョイスに向けて機動力を得ようとしている沢田くん達はバイクに乗る練習を。クロームさんは京子さん、ハルさんと一緒に家事を手伝っている。 私は私で調べ事。真6弔花のあの6人の素性を洗おうと試みているのだが、どうにも上手くいかない。思い当たりのあるファミリーや武闘家、殺し屋を探ってみたが、それらしき人物はいない。
どうしたものかと頭を悩ませて早数日。もうチョイス当日まで日がないというのに。
調べ事をしている最中にディーノ氏がやって来て、沢田くん達の家庭教師を買って出たらしい。このところ部屋にこもりきりで、さっぱりアジト内の状況すら掴めていない。いい加減部屋から出てもいい頃だろう。そう思ったのが間違いだった。
「アルちゃん!アルちゃんは何が起こってるのか知ってるの!?」 「答えてください!ツナさん達は何をしているんですか!?」
廊下を歩いていると唐突に京子さんとハルさんに詰め寄られた。突然のことで挙動してしまった。
話を纏めると、彼女達は沢田くん達が誰と戦って、何のために戦っているのか知りたいらしい。確かに何も知らないことは不安で仕方ないだろう。
「私からは何も言えませんよ」 「そんな!」 「生半可な気持ちでこちらに踏み込むつもりなら、沢田くん達から何が何でも聞き出してください」
とにかく私からは何も言わない、と伝えた。目に見えて二人はしょげたが、明るい世界にいられるのだから、それに甘んじて受け入れるのがいいと私は思う。知っている立場だからこそ言えることだが。
Penny wise and pound foolish.一文惜しみの百失い。沢田くん達は彼女達に何も知らないでいて欲しいと思っていることだろうが、そのままでは彼女達は納得しないであろうし、無知のままでは自ら危険に足を踏み入れてしまうことが起こってしまうかもしれない。それでも、私は何も言わないけれど。
「なら!私達は家事をボイコットするつもりなので協力してください!」 「お願い!アルちゃん!」 「それぐらいなら…」
沢田くん達にもいい刺激になるのだろうか。結局二人は家事をボイコットしたらしい。哀れ、男性陣。
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