▼一文惜しみの百失い(2/4)
入江さんへの尋ね事も終わり、アジトへと帰って来た。これから私は何をするべきなのか、また考え事が一つ増えた。
部屋に帰ろうと廊下を進む途中、床に置かれた食事が目に入った。この部屋は、確かクロームさんの部屋のはずだ。ノックをして彼女がいるかどうかを確かめる。少し間を置いて、扉が小さく開かれた。
「誰…アル?」 「こんにちは。お邪魔しても?」
コクリと頷かれたのでトレーを手に部屋に入った。ベッドに腰掛けた彼女の隣に座らせてもらう。トレーは膝の上に置いた。
「食事を食べてないみたいですね」
コクリ。後ろめたさがあるのか、少し間があった。私は怒ってないのですよ、と先に言っておいてトレーに被せられたラップを取った。少し冷めているけどまだ食べられるはず。 骸くんから頼まれたから、というのもあるけど彼女のことをどこか放って置けない。なぜなのだろう。栄養失調で倒れられると戦力が減って困るからか。
「今度は私と一緒に食べましょう」
コクリ。また頷かれた。箸を取って、彼女の口に運ぶ。私も一口食べさせてもらった。京子さんもハルさんも料理が上手だ。とても美味しい。
「その次は京子さんとハルさんとも一緒に食べましょうね」
コクリ。また頷く。頬を紅潮させているのを見てクスリと笑った。未来に来て、何かとクロームさんに気遣うことが多いけれど、これはこれでいいのだろう。なぜかお金を取ろうとは思えなかった。例えるなら……動物を飼う気持ちのようなものだろうか?実際はお金がかかるから飼うとは思わないけれど。
翌朝、イーピンさん、京子さんとハルさんと昨晩のパーティーの際に出来た大量の洗い物をしている彼女の後姿を見て、一歩前進したのだろう、と胸の奥が暖かくなる気持ちが生まれた。
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