▼稼ぐに追いつく貧乏なし(4/4)
「さもなくば、守護者は全滅する」
目的の丸くて白い装置まで沢田綱吉一行は到達出来たものの、守護者達を人質に、入江正一、その部下のチェルベッロ二人にボンゴレリングを渡すよう脅されていた。リングを渡しても結局は消される。ラルはツナに気にせずやれ、と言われるが、どうすればいいのかわからず困惑していた。
ボタンに手がかかる。もうお終いだ。そう思った中に二発の銃声。倒れたのは沢田綱吉達ではなく、チェルベッロの二人であった。
「僕は君達の味方だよ」
二人を撃った犯人は入江正一。ミルフィオーレの制服を脱ぎながら、こういうのは苦手だ、と彼は銃を引き離した。
入江さんは腰が抜けて地面に座り込んでいる。「大丈夫ですか」と手を差し出された人物を見て、彼は目を丸くした。
「依頼を受けて馳せ参じました。バアルの稲葉アルでございます」
私がここにこうして来ていることが驚きだったのか、沢田くんが動揺しているのがわかった。そしてこうして私が入江さんに手を差し出していることにも驚いているようだ。「裏切ったのか!」と声を荒げるラルさんに、リボーン先生がそれはないと否定した。
「アルは金を受け取りさえすれば、依頼人に絶対的に忠実なやつだ」
だから、絶対に現在進行形で金を受け取っているヴァリアーに、ボンゴレに反旗を翻すわけがない。
「先生の言う通り。これは私のポリシーにも、尽くしている主人にも、私の未来にも反しない依頼でしたから、お引き受けしたまでです」
まず落ち着いて彼の話を聞いてください、と私は沢田くんに伝えた。
入江さんの行動は24時間白蘭に筒抜けであった。けれど沢田くん達がこうして基地を無茶苦茶にしてくれたおかげで、やっと会って話すことが出来る。この基地で、この状況で出会うことが僕達の設定したゴールだと言った。
ミルフィオーレがボンゴレリングを奪うために沢田くん達を未来に連れてきたのは事実。けれど基地に呼び寄せたのは入江さん達の計画であった。沢田くん達が短時間で飛躍的に成長するために。
「君達の本当の敵は僕じゃない」 「ふざけんな!作り話に決まってるぜ!テメェがヤバくなってきたんでオレ達を丸め込もうってんだな」 「獄寺の言う通りだ!そんな話信じられるか!」 「ま、待って!考えてみてくれよ!君達を消そうと思えば、もっと早くそう出来たさ!」
その通り、と私とリボーン先生は頷いた。ボンゴレとミルフィオーレの戦力差は圧倒的。いくら油断していたとしても、本当なら勝ち目などない。
一度に私達をタイムスリップさせたのは、未来の彼らに案内をしてもらうため。基地をもっと早く動かして、彼らを捕まえることも出来た。
それだけではない。守護者でないイーピン、笹川京子。三浦ハルまで過去から連れて来たのはなぜか。
「人は、守る物があると強くなれる。そのために必要だと判断したんだ…」
入江さんも後ろめたいところがあるのか、視線が下がっていった。
沢田くんが怒りに任せて入江さんに掴みかかろうとするのはわかっていた。入江さんの前に立ち塞がって、入江さんに危害を加えようとするのを阻止する。
「どいてよアル!もしかしたら…もしかしたら皆が死んでたかもしれないんだよ!?」 「そ、その場合はそれで仕方ないんだよ…」
「僕だって一生懸命やってるよ!」と入江さんは叫んだ。彼は彼で大変な思いをしてきたのだ。
「沢田くん。これはそんなに小さな話ではないのです」 「それに!この計画はこの時代の君の意思でもあるんだ、綱吉くん!」
この計画は絶対にミルフィオーレ側に漏れてはいけなかった。だから、この計画は入江さんと未来の沢田くん、未来の雲雀さん、そして未来の私の4人のみの秘密だった。
未来の沢田くんは表立って。雲雀さんは過去からやって来る沢田くん達を導くため。入江さんはミルフィオーレに潜伏するため。そして私は、こうして出会った後に入江さんを護衛するため。
彼の行動は手段を選んでいられない、そしてこれからやって来る戦いに備えてのことだったのだ。リボーン先生と私は完全に入江さんの主張を信じることにした。「ありがとう」と言って取り乱していた入江さんは冷静さを取り戻す。
「君達の敵となるのは、白蘭サンだ」
「やっぱり…」心のどこかで確信していたのだろう。沢田くんが呟いた。無意識の行動だったのだろう。本人も驚いている。
そこから入江さんが説明を続ける。白蘭の恐ろしい企みを。7³を集め、この世界を手に入れようとしているらしい。彼はこの意思をトゥリニセッテポリシーと名付けた。思い通りにならなければこれ以上の地獄絵図になるだろう、と入江さんは言う。
白蘭を止めるためには、この時代に倒さなければいけない。あの能力を封じるためには。そこからの説明は長くなる。
緊張から腹痛を起こした入江さんは地面に膝をついた。ここまで白蘭の目をかいくぐり、入江さんの元に到達することを第一段階とおく。そしてクリアすべき第二段階。今日に合わせて、全世界でミルフィオーレに総攻撃を仕掛ける。 第二段階とは何か、と問うリボーン先生に私が答えた。
「一番の鍵は、ヴァリアーによるイタリアの主力戦です」
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