銭ある時は鬼をも使う(4/4)


部屋の隅に座り込んでいるクロームさんの隣に、私も並んで座った。クロームさんの傍には麦チョコとミネラルウォーターの空がある。未来に来てこれだけしか食べなかったのだろうか。私は持って来た荷物の中に入っている非常食を取り出す。


「食べますか?」
「でも……」
「食べなければ死んでしまいますよ?」


そう言いつつ、私はおにぎりの封を開けておにぎりを頬張った。私の食欲に合わせて、二人分の食事は十分足りている。クロームさんも戸惑いながらも、サンドウィッチに手を伸ばした。


「…ありがとう」
「雲と霧は似ていますから。そういうことで」
「……似てないと思う」


あれ?どっちも水蒸気の発生によって起こるものだから似ていると言っても過言ではないと思ったのに。

サンドウィッチを小さな一口で食べ続けるクロームさんを横目で見ながら、その指にあるボンゴレリングに目線を移した。蜜のようなものがリングを覆っている。きっと、あれがマモンチェーンの代わりを成しているのだろう。おかげでリングの反応はキャッチされない。この場所をすぐには突き止められはしないだろう。


今日はここに泊まるとして。日本にはボンゴレの日本支部があるらしい。明日はそのボンゴレアジトを探して歩かなければいけないだろう。そこなら守護者であるクロームさんの保護を行ってくれるはず。


「明日は朝早くにここを出発しましょう」
「それはダメ」
「…なぜ?」
「骸様達が帰ってくるかもしれないから…」


そうか。彼女の家族と言ってもいいくらいの絆が深い彼らのことが気になるのか。クロームさんはギュッと鞄を抱き締めた。三叉槍の先端が鞄から覗いている。金との繋がりしか信じれない私は、クロームさんの信頼による絆を理解出来ないが、彼女の思いを無下にすることなど出来ない。

「わかりました」そう言って身を寄せた。夜は冷える。上着を脱いで、二人が入れるようにして肩にかけた。
子守歌代わりに、これから私の知っている情報を説明しましょう、と私の知り得ることを話し始めた。クロームさんは時々泣きそうな表情をしながら、私の話を素直に聞き続けた。


「……暖かい」
「そうですね」


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