バアル・ゼブル(2/4)


「参ります!」


バジルがそう言ってブーメンラン状の刀を構えた。それをアルは冷めた目で見つめる。


「どうぞ、お手柔らかに」


そう言ってアルはロングスカートの裾を摘まんでお辞儀をした。そのスカートからゴトゴトと数個の掌大の球が地面を転がった。その球から黒い煙が立つ。


「な、煙幕!?」


勢いを増して煙幕が周囲に広まった。アルの姿は煙幕に隠れる。どこから来るか、バジルが周囲を警戒しているのがアルには伝わってきた。

煙に紛れて刃渡りが大きいサバイバルナイフをバジルに向けて勢いよく振り下ろす。金属と金属がぶつかり合う音が響いた。ハイパーモードの自分だから、と過信したバジルが押されていることに目を丸くした。


「油断すんじゃねえぞ、バジル」


観覧席からリボーンがバジルに注意をするが、アルはそんな隙を与えはしない。瞬時に片手をナイフから放し、懐からリボルバーを取り出す。続けて3発撃ったが、いち早く気付いたバジルはアルから距離を取る。


「嘘!稲葉さんって戦えたの!?」
「ヒュ〜♪アイツ、結構やるね」


沢田側、ヴァリアー側両方がアルが戦いに慣れている動きに驚いた。それもそのはず。本人は今日の今日までこれといって戦闘を披露する場を持っていなかったのだから。


「俺はアルに、銃の扱い方から始め、剣術、棒術、トラップの仕掛け方、爆弾の使い方まで、ありとあらゆる戦い方を直々に教えた」


そうだ。初めてアルに会った日にリボーンが元・教え子だと言っていた、とツナは思い出した。自分は一応ボス候補だから…けれどそんな物騒なことを女の子に教えているとは思わなかった、とツナは顔を顰める。


「り、リボーン!女の子になんでそんなこと教えたんだよ!」
「そんなことは決まってる。……人を、殺すためだ」


そう言ったリボーンの目は据わっていた。「当時のアルには必要なことだったんだぞ」と言い、ボルサリーノの唾を掴んで深く下げる。ツナはそんなリボーンに対して、何があったのかと疑問を感じた。


「俺がアルに殺しを教えたのはまだアイツが10にも満たないガキの頃だったが、アルの才能はその時既に開花していた。山本とはまた違う、生まれながらの殺し屋と言ってもいい」


リボーンがアルのことを語る間も、アルはナイフを振り、距離を取られるとリボルバーを撃つ。ハイパーモードであるバジルに互角の勝負をしている。驚きが増していく。

生徒を見る目は一級のリボーンがこれ程までにあの少女のことを称賛する。あれから数年。アルのことだ。成長していないとは限らない。リボーンのあまりの剣幕に、観覧席に緊張が走った。


「アルの本気はこんなもんじゃねえぞ」


<<< >>>

back




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -