一諾千金(3/3)


「お帰りなさいませ」


深夜に行った掃除も済ませ、談話室にてハーブティーの用意をしていた。丁度いいタイミングで皆様お帰りになったようで、私としては時間が無駄にならなくて万々歳だ。

血生臭い鉄の臭いがする。恐らく任務を完了させ、屋敷に帰って真っ先にここに来たのだろう。すぐに浴槽と臭いを消す準備をこの後すぐにしなければいけないようだ。


「う゛お゛ぉい!どこぞのファミリーが襲撃に来ただろう!?どうしたァ!?」


スクアーロ様の声はまるで爆音。近くで騒がれると鼓膜が破れてしまいそうだ。
ゴミならあったが、襲撃などというものはなかった。スクアーロ様の質問に答えることは出来ない。


「何のことかわかりかねます」
「とぼけてんじゃねぇぞォ!!」
「とぼけてなどおりません。それより、ザンザス様はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」
「なぬ!貴様、ボスに何の用だ!色目を使う気か!?」
「ししっ、ボスならすぐ来るぜ」


親切に教えてくださったベル様は、レヴィ様に「うるさい」とナイフを投げていた。こうして何かにつけてナイフを投げるから使用人が病院送りになったのだろう。とは言え、ベル様が使用人を病院送りにしなければ私は今のようにここで働けてはいなかった。レヴィ様には申し訳ないが、ベル様の戯れに目を瞑るしかない。

その後、ベル様のおっしゃった通りすぐにザンザス様もやって来た。ずかずかとスクアーロ様とレヴィ様を押し退けて部屋に入って来る。文句を垂れるスクアーロ様を無視してどかりと一番上座の椅子に座り込んだ。ハーブの香りが漂うティーカップをお出しする。


「ザンザス様。ご命令通り、ゴミは処理しておきました」


私の任務報告を聞いてザンザス様は「よくやった」とお褒めくださった。
先程まで喚いていたスクアーロ様は何のことだ、と疑問符を飛ばしている。ゴミのことなど、幹部の皆様は知らずともよい。

依頼人の要望に沿えることが出来て初めて任務達成と言える。依頼は成功してなんぼのもの。でなければ金が手に入らない。

ここ数日でザンザス様の顔色を察せられるようになった私は、その様子から要望に応えることが出来たのだと理解し、任務成功の喜びを噛み締めたのだ。


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